福岡珍獣旅行 第二夜 前編

 

朝。

両隣のベッドが騒々しくて目を覚ます。

 

1人は左のベッドでぐっすり眠っているデデ公。初日の疲れがどっと出たのか、グゥグゥ大きないびきを立ててごろごろと寝返りをうっている。右隣のベッドからは、ドガスくんが何やら暗闇の中自分のバッグからゴソゴソ取り出している。

そうしてそのまま立ち上がって部屋の風呂場にこっそり向かったと思うと、数分も立たないうちに水の音が聞こえ始めた。どうやら朝風呂を満喫しようとしているらしい。

起きたなら話し相手にでもなって貰おうと思っていたが、どうせ後15分位で出てくるだろうし…もうしばらくデデ公のいびきをBGMにのんびりベッドで転がっていよう。

10分。

15分。

 

…そのまま、30分以上が経過した。

 

まだ彼が出てくる様子は無い。

意外と長風呂なんだな…。

流石にベッドでゴロゴロするのも飽きたし、そろそろコーヒーでも飲むかとお湯を沸かそうとした時、風呂場からツヤツヤのヤング滝藤賢一が現れた。

ドガスくんである。

☠「あれごめん、起こしちゃった?」

>oo<「起きてた…風呂、長かったね」

ベッドに腰を降ろした彼と備え付きのマシンで作ったエスプレッソを飲みながら、デデ公が起きない様に声量に気を付けながらこっそり会話し始めた。

どうやら人生で一度も触れたことのないバスソルトに大興奮した挙句、気が付いたらのんびり浸かって居たらしい。何だか話を聞いてると俺も風呂に入りたくなってきた。折角だし、どんなもんだか確かめてみよう。

 

>oo<「んじゃ俺も風呂入ってくるわ」

☠「…えっ!!!???」

>oo<「…どうしたの?」

☠「いや、風呂の水抜いちゃったけど…大丈夫…?」

 

何やらしょぼくれたハムスターの様な顔をしたヤング滝藤が尋ねてきた。

 

>oo<「えっ…別に良んじゃね…?」

 

自分としては常識的な行為だと思ったし、彼とはまた別のバスソルトを使えるので気にしなくていいといった具合に伝えたのだが、彼はまだ釈然としないといった具合で、改めて湯を貯めてる途中寝ぼけながら目を覚ましたデデ公に対しても

 

「自分が上がったあとの風呂の水抜くのって常識かなぁ?なぁ!!」

 

…と、自分の行動が常道なのかどうか聞き取り調査をし始めた。

そんなに気にすることじゃないのになぁ…

と思いながら風呂でぬくぬくして、上がってきたのもつかの間。

どがすくんから唐突にこう言われた。

 

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☠「しゃつのあいろんおねがいしていい?」

なんでこっち頼むのは気にしねぇんだよ!!

(掛けてあげた)

 

 

・勃発、駄菓子バトル

言ってしまえば、2日目の日中は空白の時間である。

なにせ本日のメインイベントは

皿倉山で夜景鑑賞」

──それを軸に考えると、

[チェックアウト時刻の12時](高い金を払った以上ギリギリまで粘りたいという卑しい心)

[皿倉山行き送迎バスの発車時刻の16時]

「観光出来るっちゃ出来るけど微妙な時間よね」と言った空白の4時間がどうしても発生する。

そこで我々はスペースワールド駅を降りて徒歩数分、イオンモール八幡東店でコインロッカーに荷物を預けた後のんびりウィンドウショッピングで時間を潰す事にしたのだった。

 

☠「お前ロッカーの鍵ぜってぇ無くすなよ!?」

>o'ω'o<「うーん…あんまり自信ないかも…」

>oo<「ところで上の階の楽市楽座ってなんだ?カドショとか?」

>o'ω'o<「いやちょっとしたゲーセンだね…あれ、関東ってまさか無い!?」

>oo<「九州だけじゃね?」

☠「俺も知らねぇ」

>o'ω'o<「さっき寄ったエディオンとかも関東には無いんだよね、身近に使ってた店が無いって不思議なんだよなぁ…」

>oo<「でもやっぱこういうローカルな話も旅の醍醐味の1つだよな!」

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※埼 玉 あ り ま し た。

(イオンモール川口前川店3F。どこだよ。)

それにしてもイオンモール八幡東店、思った数倍馬鹿でかい。流石に我らがレイクタウンに比べればワンランク下がる(と思いたい)ものの、歩くだけでも割かし疲労が溜まる。皆考える事は同じなのか、何も言わずとも「フードコートでまったりするか…」という雰囲気が出来上がり、またなんとなーく3階まで導かれると、駄菓子屋のテナントが目に止まった。

「子供の頃は何のお菓子が好きだった」とか、「駄菓子の値段上がったよな」とかたわいの無い話をしながら、店頭に陳列された駄菓子を手に取ってみる。別にこんなの地元帰ってから幾らでも食べられるのだが、見てると無性に食べたくなってきた。

 

>oo<「何か普通に買うのも味気無いし、300円以内で誰が一番センス有るかバトルしねぇ?」

 

という鶴の一声により、唐突に「最強三百円駄菓子バトル」が勃発したのだった。

 

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デデ公作。

本人イチオシのヤングドーナツ二刀流が果たしてどう転ぶのか。

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ドガス作。

値段の調整よりも今食べたいものを優先したオトナ流スタイル。

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メガネ作。

300円で味わえる満足度を極限まで高めたハナタレスタイル。

 

 

結果はというと…

 

 

 

 

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俺の圧勝だった。

センスがいいとかそういう問題ではなく、単に

「イマイチ企画を分かってなかった」ドガスくんと「ヤングドーナツ二刀流」という村田内川の二遊間(By骨)の様なふざけたテーマで立ち会おうとした男達に負けるはずがないのだ。

>o'ω'o<「えぇ〜美味しいじゃんドーナツ…」

哀れデデ公。

この後最下位だった不満をぽつぽつ言い出し始めるのだが、それはまた別の話。

 

音楽を聴くメガネ虫#13EMBRACE

BOOM BOOM SATELLITES

『EMBRACE』

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日本のビッグ・ビート史に残る伝説的なバンド、BOOM BOOM SATELLITES

ベルギーからデビューした当初は完全にクラブ音楽のインストグループとして割り切っていたが、3作目のアルバム『OUTLOUD』(これもめちゃくちゃカッコイイ)から徐々に歌モノ有のロック寄りに近づいて行った。

元々あまり表舞台には出ず、知る人ぞ知るといったニュアンスのグループだったのだが、何をとち狂ったのかあの伝説のクソアニメ「ニンジャスレイヤー」のOPを手かげ(てしまっ)た事により、一時ニコチュー=サンからの注目度がそこそこあった。

そんな彼らの作品の中でも、一番ロックとクラブミュージックのバランスが取れていて、癖が無く取っ付きやすい仕上がりになっているのがこのアルバムだと思っている。

 

 

 

よりダークに、より都会的にアレンジを施し蘇らせたカバー『HELTER SKELTER』にはただ原始的に錯乱していた印象の強いビートルズのそれよりも狂気具合が洗練されていて、オリジナリティとマッチっぷりを考慮すると決してMötley CrüeやU2のそれよりも引けを取らないだろう。その後に続くのが機動戦士ガンダムUC episode 5のテーマソング『BROKEN MIRROR』は不穏な感情が段々溜まりに溜まって一気に爆発していくイメージ。ガンダムファンからすればバンシィという機体の独特の怖さはわかって貰えると思うが、明らかにやべーやつが上空から降って来た時の緊張感のマッチ具合は半端では無かった

 

その名曲達の脇を今作最もシンプルなダンスロックナンバー『DRIFTER』、よりダウナーでサイケデリックなアングラさを追求した『DISCONNECTED』、激しいサビのツーバスに身が昂る『FLUTTER』が固めるが、BOOMBOOMSATELLITESはバラードの質が高さも魅力的で、寧ろここからが本番と言っても過言では無い。透き通った歌声が響き渡る『NINE』は晴れやかな朝の空気のような爽やかな仕上がりで、今までに無かった位でメジャー進行のポップさにびっくりしたものの、『ANOTHER PERFECT DAY』から始まった今作「EMBRACE」……

「抱擁する」

という暖かい意味合いをテーマにした今作を締め括るに当たっては最も適していた曲だと感じる。

実際、相方の中野雅之はこんな事をTwitterで呟いていた。

 

「そういえばnineっていう曲は震災後、悩んだあげくの末に出来た曲だった。 川島君は鎮魂歌とか、祈りとか、誰かの為に捧げる為の歌を歌わせたら最強だよ。今日も川島君は歌います。」

 

 

 

 

 

 

 

ボーカルの川島道行はこのアルバムのリリースから約3年後、脳腫瘍との壮絶な闘病生活の末2016年10月に逝去されている。

没年最後にリリースしたE.P『LAY YOUR HANDS ON ME』の素晴らしさも、いつかどこかで語れたらいいな。

 

音楽を聴くメガネ虫#12 Unforgettable

Nat King Cole

『Unforgettable』

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自分にとって1番馴染みある古いポップスといえばビートルズだった。その少し前を遡るとエルビス・プレスリーの壁にぶち当たるのだが、ただでさえ現代ロックがビートルズの派生系なので若干古臭さを感じてしまい、じゃあそれよりも前のオールディーズはどうなんだとなると、何となく地方局が深夜帯にやってる世界の名盤とかの通信販売で流れる様な、どことなくもっさりしてる曲が多いイメージが強い印象だった。

 

が、この男は違った。

 

 

 

始まりのILoveYouだけで鳥肌が立った。

この人にとっては数秒でも人の心を掴むには充分な時間なのだろう。70年の時を経ても埋没しない唯一無二の圧倒的な才能に身を震わせる他無かった。

それにしても、なんて優しい歌声なのか。きっと慈愛に満ちた人だったのだろう。歌声だけでもそれが伝わって来る。

『Portrait Of Jennie』は特にそれが顕著で、不穏気なバイオリンのイントロから始まるこの曲でのコールの深く優しい歌声は安心感にも似た何かを感じ、おばけが怖くて父親の懐に飛び込んだ幼少期の頃のあの温もりを思い出す。

 

父といえば、コールは65年に45歳の若さで亡くなっているものの、その後91年に歌手デビューした実娘のナタリー・コールが表題曲『Unforgettable』をオーヴァーダビングし、バーチャル下での親子共演を果たしたカバー曲がグラミー賞に輝いている。

原曲の恋人を想うラブソング…

乱暴に言えばシンプルなノロケという意味合いが強かった従来に対し、今は亡き父とのデュエットというパフォーマンス下では、

歌詞中の、

 

And forever more, that's how you'll stay

(これからもずっと、貴方は私のそばに居る)

 

等の部分が全く別の意味合いに変化する面白さが堪らなく良い。

 

また、王道のジャズテイストに曇りながらも艶のあるボーカルワークが心地良い『What'll I Do?』『Lost April』、ディズニーなんかで流れてそうな雄大でコミカルなミュージカル調の『Hajii Baba』等聴き応えも多い。

 

 

 

人間に産まれてきてよかった、

自分にこれを好きになれる感性があって良かったと本気で思えるような、そんなベスト盤でした。

 

音楽を聴くメガネ虫 #11マグマ

稲葉浩志

『マグマ』

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B’zのボーカル稲葉浩志の1stソロアルバム。

作詞作曲ともに全て稲葉が制作している。

後述の様な強烈な歌詞の説得力をより強度に、かつ繊細に補強する曲作り自体はとても素晴らしいし、B’zでは作れないような、ウッドベースが終始鳴り響くジャジーなテイストだったり、ボサノバだったりと色々な変化球を投じている。

が、正直従来ファンからすればメロディ自体の奥行は特に感じられる物は多くないし、特別何かキャッチーな曲が有る訳では無い。

にも関わらず、このアルバムはなぜ素晴らしいのか。

それは方向性である。

果たしてあのB’zの稲葉のソロアルバムは一体どんな暴れた作品なのだろう、どんなメッセージ性を込めた物だろうと誰もが思ったはずだ。現にその1人だった自分は1曲目を聴いた瞬間、困惑した。

 

 

1曲目、冷血の書き出し。

 

きみは きみの思うように 生きろ

ぼくは ぼくのしたいように したい

自由とは 何かを知りたい人よ

自由とは ぼくだけに都合いいことでしょう

 

 

今作は今までのB’zの中にあったポップで前向きな要素は一切排除され、常に薄暗い雰囲気が漂い続けている。

『friends』の様な愛する者を失う悲しさでも、The 7th bluesの頃の様なやさぐれて尖ったそれとも違う。

卑屈で、惨めで、孤独で、目先の欲に流されてはまた後悔して、置いていった者たちに嫉妬する。そんな心の奥のマグマの様に煮詰まった利己的でどうしようも無い感情。

決してスポットライトを当てる事は許されない誰しもが持つ奥底の闇を、日本が誇る完全無欠のスーパースターの稲葉が淡々と恥ずかしげもなく歌い上げていく衝撃は凄まじいとしか言い様が無かった。

 

チャートに乗る人間が「頑張れ」だとか「ファイト」とか歌うのは仕事上当たり前、というか義務…とまではいかないが、大スターだと思ってた人がこちら側の土俵に立ってくれた方が1番胸を打つ。

そんな実感が湧いたのは、このアルバムがあったからこそなのかもしれない。

 

 

音楽を聴くメガネ虫#10 個人的に好きなMV

 

っていう体で、何か単品だけサッと語りたい時とかにこの手法取って行こうと思います。

そもそもMV自体あんまり観ないからね…

 

 

Justin Timberlake

『Suit & Tie feat. JAY Z』

はい。

もう正直に言います。

これが語りたいだけです。

女性の喘ぎ声なんかよりも遥かにセクシーなJustin TimberlakeのファルセットにJAY Zの低音が響く男らしい無骨なラップが混ざり合う、顔も肌の色もプレイスタイルも何から何まで違う男達の極上のセッション。再生ボタンを押した瞬間から最後まで心を掴み続ける構成力。モノクロでここまでカッコよく、色気を醸し出すMVを他に見た事がない。

曲単体で言うなら紛うこと無く人生の中で1番好きな曲。  

あとFateゲイボルグの反響音ってバックでコンコン響いてる奴と同じ所から引っ張ってきてるのかな。この音一つだけでも心地好い。

 

MAROON5

『Sugar』

曲自体はスタンダードなポップナンバーだし、旬も過ぎてるので特に言うことは無いんだけど、ファンの結婚式をサプライズでお祝いするっていう内容なのがもうダメ。ズルい。泣く。

人間の幸福全てがここに詰め込まれている。歌詞も相まってか毎回半泣きになって帰ってくるんだよな…

 

 

銀杏BOYZ

『恋は永遠』

最初聴いた時は峯田風邪ひいたかなと思って心配だったけど、観た後だと納得した。

例えいつかロックのレコードを聴かなくなっても、初恋の人が中年の劣情を一身に背負っていたとしても、時という名の化粧で覆われていく思い出は生涯変わる事無く美しい。

 

 

マハラージャン

『くらえ!テレパシー』

曲リズム歌共にめちゃくちゃキレまくってる上、アニメも3DCGも曲同様めちゃくちゃキレまくってる。界隈の一流が集まって本気でバカやる気合いの入ったクソダサMVを持ってこられるともう好きになるしかない。

あと、モーションキャプチャーのダンサーもマハラージャン同様ちゃんと頭にターバン巻いて踊ってるらしくて笑ってしまった。

 

SOUL'd OUT

『イルカ』

ダサいといえば忘れてはいけないのがSOUL'd OUT。

彼らの曲の中でもトップクラスに好きな曲がこのイルカなんだけど、全く意図が掴めないストーリーに仕上がっていて未だに「あれは何だったのか」と心に残る作品。

綺麗なイルカが実は女性でしたはまだギリギリ分かるけど、それを撃退する為にお腹からミサイル発射しました〜終〜は『COZMIC TRAVEL』でDiggyがCGの直線の道路で車のハンドル思いっ切り回しちゃってる時と同じ位意味不明。

あと最近知ったけど、このMVを担当した監督が後々サカナクション新宝島のMVを任されるそうです。

納得。

 

 

Iron Maiden

『Holy Smoke』

オチ要因でこの方々にも来て頂きました。

ヘビメタ界の重鎮ことアイアン・メイデン=サンです。

大の大人が菜の花畑ではしゃぐな!!!!木登りをするな!!!何なんだそのボンテージ集団は!!!!それとプールでギターを弾k…?

随分小っちぇなぁ!?????

細かいことから大きな事までキリがない程ツッコミ所満載で、最早漫才師養成通信教育ビデオの一環。

そう考えると始まってから30秒経ってようやく()おかしくなり始めるのは、ある種芸人達にツッコミを入れさせる為のフリというか猶予だったのかもしれない。

 

珍獣旅行第一夜 後編

 

ホテルに帰還した我々は先程の汗を流す為、最上階の大浴場に向かった。

いままで散々遊びまくったが、今回の旅のコンセプトは「高級ホテルの最上階で下民を見下しながら乾杯する」こと。パッと見悪趣味にも程があるコンセプトだが、我々はこの機会を1年間待って高いお金を払ったのである。このホテルを骨の髄までしゃぶり尽くさないと気が済まない。

キャラには合わないけど、ナイトプールにだって入っちゃうもんね。

折角だし、下見もしに行こう。

最上階に到着すると、流石高級ホテル。

眼前にガラス貼りの豪華なプールが広がっていて、まだ夕方だがそんなことは関係無いとばかりに腰まで水に浸かる男とプールサイドのベンチに足を伸ばし、カクテルを嗜む水着の女性らが優雅なひと時を過ごしていた。

よ……陽キャだぁ〜!!!

我々は本当にこの後キラキラした陽キャの極み空間に入室し、本番の真夜中にアンちゃん達と同じような事がパリピ的行為を行えるのだろうか。

…というと否!

あまりの恥ずかしさに入ることが出来なかった!

これも目当てのひとつだったのに!

やれ「寒いから」とか「水着が面倒」とか「男三人居ても仕方無い」とか三者三葉色んな理由を取ってつけて「機会があったらまた行こうね」とすげ帰ったが、実際の所…

ただ入るのが恥ずかしかった…。

 

ナイトプールから目を逸らし、そのまま大浴場の更衣室で裸一貫になる。

そういえば部員とお風呂に入るのも最早(個人的には)定番になってきた気がするな。

昔エモさんと行った瀬戸内の温泉から始まり、フロくん、マリくん、みなとくん、だーすー、ザラスくん(未遂)、そして今回はデデ公とドガスくんが追加される訳だ。ひょっとしたら一番部員の棒を見てきた男なのかもしれない。

いやだなぁ。

そんなきたない事を考えながら一人湯船で脚を伸ばしていると、ドガスくんがタオルを肩にかけて大股おっぴろげてやって来た。

なんてデカくて男らしい奴なんだ。

しかしその後腰にタオルを巻いて小股でやって来たデデ公に「男らしくねぇ」と説教を垂れ始めた。

なんてクソほど器の小さい奴なんだ。

別にそんなの個人の勝手だよな?

言い返してやれデデ公。

「だってこの中で一番小さいの絶対俺やもん…」

いや、そういう問題じゃないだろ。

 

 

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風呂上がりに部屋でドガスくんと買ってきた缶ビールで乾杯した。彼の有能な所は風呂に行く前にグラスを冷蔵庫でキンキンに冷やしてくれた所である。そんな気遣いどこで学んできたと聴くと

「昔、ちょっとね」

と照れ臭そうに語っていた。なんだそりゃ。

ナイトプールには行かなくなってしまったが、気頃の知れた連中とお部屋の中でだべりながらゆっくりするのもまた格別だ。

しかしお酒を飲んでまったりしていると、今度は何だか眠気が襲ってくる。早朝から集合してから遊び回って今に至るから仕方ない所はあるけれど…流石に寝るのは勿体無い。

そんなこんなで我々は当初の予定より早く、下民を見下す為に福岡タワーへと向かい始めた。

 

・ろーどとぅ福岡タワー

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デデ公から教えられた通り、最寄りの西新駅から向かう道は学生街の要素を含んでいる様だ。博多のイメージからはちょっとかけ離れた赤レンガ作りの古式ゆかしい学び舎の道を抜けて、長谷川町子キャラクターの銅像が立ち並ぶ「サザエさん通り」を突き抜けていく。

道中、やれ「この立地には住みたくない」だの「引越す時の条件は」だの、中身がある様で無さそうな下らない話をしながら三人笑顔でタワーまで歩いて行った。

 

ここから先、地獄が待っているとも知らずに。

 

 

・珍獣、こわれる

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>o'ω'o<「タワー入館120分待ち!!!!????」

 

素っ頓狂な声が館内中に響き渡る。

この日はなんと「新成人応援キャンペーン」の日。新成人の入場料金が通常価格から90%近い大幅な割引を受ける特殊な日と被ってしまったのだ。

当然デートコースに持ってこいなスポットであるここは若いカップルでごった返し、最早同じフロアのハローワークコーナーにまで行列が突き抜けるかというレベルにまで陥っていた。

 

>o'ω'o<「ど、どどどどうする……?待つ……?」

 

一番テンパっていたのはデデ公であった。

それはそうだろう。今日の為に切符や場所やレストランまで全て調べていてくれたのだから。

 

☠️「まあまあこれは仕方ねぇよな!」

>^^<「せっかくだしタワーの前で三人の自撮り撮ろうぜ!」

 

我々は絵に書いたように落ち込む彼を慰めるのに精一杯だった。

 

☠️「とりあえず晩飯何にスっかぁ」

>o'ω'o<「あっ!そしたら僕がよく行く天ぷら屋さんが有るんだけど、そこ行きません?今日営業中らしいから大丈夫だし」

>^^<「よしそこにしよう!おぅ天ぷらドラフトやろうぜ!俺舞茸な!」

 

流石に2時間若いカップル連中に混ざって待つのは辛い。

福岡タワーで下民を見下す事も、塔の中枢で営業しているビストロにも行けなくなってしまったが、友達となら喋りながら散歩するだけでも楽しいものである。

 

>o'ω'o<「あそこは良く友達と行くんだけど、特に天ぷらも…何より明太子が食べ放題だし……」

 

サクサクの美味しい揚げたて天ぷらが食べられる事を期待して、我々は来た道とは別の、仄暗く気味の悪い団地通りを会話しながら引き返して行った。

 

 

 

 

 

今思えばこの鬱屈とした雰囲気もフラグだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

〜点検の為、店休日とさせて頂きます〜


>o'ω'o<「ええっ!??!!?!?!!??!!!?」

 


ようやくご飯にありつけるとウキウキで天神駅に降りたのも束の間。

腹ペコの我々を待っていたのは、天ぷら屋さんが入っている商業ビルのメンテナンスの報せだった。

つまり急遽お休みになったらしい。

 


>o'ω'o<「はぁっっ……でっ……ええっ……?いやそんな事ある……?」

 

余りにショックだったのだろう。

FXで有り金全部溶かしたような顔でビルの周りをぐるぐる歩き始めた。

 

>oo<「ヤバい……リカバリーしないと(ドガスくん何か一言言ってくれ)」

☠️「………………」

>◎◎<「ああっ持病入った!!!」

(持病……ドガスくんは1時間に15分の割合で無言になる傾向がある。)

>◎◎<「デデ公待て!ここら辺に昔行ったピザ屋があるから行かねぇか?」

>o'ω'o<「……う、うん」

>oo<「えっとたしかこの辺に……あった!このビルだ!」

 

〜点検の為、店休日とさせて頂きます〜

 

>◎◎<「……へっ?????」

 

何も言葉が浮かばなかった。

別の商業ビル内のテナントであるにも関わらず、たまたま二件連続でビルのメンテ日が被ってしまったのだ。

 

 

 

>oo<……全てがどうでも良くなる

>o'ω'o<……冷や汗出っぱなし

☠️……白痴の如く無言。

 

 

 

 

これを専門用語で「王手」という。

 

 

 


悲しいかな、大型商業施設が二件もこんなんだからか天神周辺の飲食店は安いチェーンすらほぼ満席。見渡せば見渡す程この状況が積んでいるという確認でしか無くなってしまった。

失意の最中天神駅に戻り、とりあえず博多に帰ってご飯屋さんを探そう…と思った矢先。

 

 

 

またしても事件は起こった。

 

 

ホームで列車を待ちながら、お店を探していた時。

 

 

>o'ω'o<「ドガスくん、ここどう思う?」

 

>oo<☠️「……?」

 

>o'ω'o<「ここなんだけどさ」(ズィッ

>◎◎<☠️「「おいその人違う人だから!」」

 

何とデデ公、お腹がすき過ぎたせいか幻覚を見始めた。

後ろに並んでた似ても似つかぬ全くの別人にスマホのスクショを突き付け始めたのである。

 

>oo<(おかしなっとる……)

 

その後電車の中で「博多」の焼肉屋の予約を代理で取り、何とか彼の魂をウツシヨに引き留める事に成功した。

 

博多に着いてからは最早、無言であった。

焼肉の事を考え、焼肉以外の煩悩を捨て、ただひたすらに歩を進めた。

ようやく晩飯にありつける。

 

 

 

はずなのだが……

 

 

 

 

>◎◎<「ええっ!?予約取れてませんか?!」

店員さん「あの、もしかしてお客様が取られた店舗は他店舗のものなのでは……」

 

>oo<「あっ」

 

なんとこの男、腹が減り過ぎて「博多」の文字だけ見て他店舗に席予約を入れてしまった大戦犯だったのである。

 

まずい…

このままでは本当に何も食えずに帰る事になる。どう考えてもミスった自分が100%悪いのだが空腹過ぎてなりふり構っていられなかった。

とうとう俺はキレた。

キレてしまったのだ。

 

>◎◎<「あのー大変申し訳無いのですがそしたらあのですね私別店舗の予約を今から取り消しますのでこの店に新たにフリーとして新規で入れてもらうことって可能ですかね無理なら無理で全然お気になさらず大丈夫ですんで(早口)」

店員さん「あっ⋯⋯(察し)ただいまお席作りますので少々お待ちください」

 

大方奴さんもキ○ガイご新規三名様を入れたくは無かったのだろうが、暗黒タマタマの様な形相をして突っ立っている男たちを相手取るには彼女は少々役不足だったようだ。数分もかからずにOKが出た。

 

通される。

 

席に付き、水を飲み干す、無言。

 

モニターを触る、ご飯大3つ、無言。

 

肉が来る、焼く、口に突っ込む。

 

カルビ5人前。

 

肉が来る、焼く、口に突っ込む。

 

タン5人前。

 

一時間経って、誰かが口を開いた。

 

「次の肉、注文しとこう」

 

 

 

…これは食べ放題制限時間90分のうちに交わした、貴重な会話の一つである。

 

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──あまりにも食べる事に夢中過ぎてホテルに戻る道で脇腹を抱え博多の夜の風になった男と、携帯電話を店に忘れ取りに戻った男が居たのは語らないでおこう。

 

 

福岡珍獣旅行 第一夜 前編

これは2月16日〜18日に珍獣3人で福岡のまちを遊び歩いた時の記録である。

何故今更こんな物を書いているかと言うと、自分が何処まで物事を詳細に覚えているのかというふとした疑問と、振り返る暇が無かった哀しさによるもの。

やっぱりいくつになっても、男友達とドタバタするのって楽しいよね。

 

 

・はじまり

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午前四時、4畳1間の簡素な部屋で目覚める。

本日のフライト予定は朝6時半。

始発から羽田に向かっても間に合うは間に合うのだが、遅延した時のダメージが大きすぎる為、横浜は石川町の妙なホテルで朝を迎えることにした。

ホテル…といっても、どうやらここは日雇い労働者が生活するウィークリーマンションも兼ねているようで、歯磨きの為向かった水場では鬼殺しのビンをコップ代わりに使う全身タトゥーの丸坊主の男とすれ違う。普段ならお兄さんのあまりの威圧感に怖くて震え上がっているが、今日はいつもとはわけが違う。

楽しみ過ぎてロクに眠れなかった体をコーヒーとシャワーで叩き起す。100円を入れるとお湯が出てくる例のアレだ。幸いドライヤーは洗面所に着いていたので、軽く身支度を整えてから部屋を出る。

やはり旅の当日はワクワクする。今回はどんな出来事が待ち受けているのだろうか。

そんな期待を胸に、まだ暗い川沿いの道を進んでいく。

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朝焼けに包まれていく羽田空港

「高所恐怖症なんて男らしくない」と心の中で呟いていても、やっぱり怖いものは怖い。

だが隣の席のお姉さんがフライト中自前のタブレットプペルを見始めるというあまりの衝撃に恐怖が全て吹っ飛んでいった。

ありがとうお姉さん。

お礼におっぱい揉ませてください。

 

福岡空港に到着後、上着の襟を調えながら他二匹にもうすぐ着くからと連絡を取り、地下鉄に向かう。その距離およそ3キロ弱。県庁所在地から僅か10分で空港なんて狡いの極みだ。大宮で言うなら与野辺りに空港がある想定になるぞ。羨ましいなぁ…

 

・再開するばかども


それから博多駅でご存知我が友らデデ公とドガスくんに再開。ドガスくんは相変わらず、デデ公はちょっとだけ肉がついた様子。元々がガリガリだったし、ストレス溜まってるって言ってたもんな。

デデ公とドガスくんの両者は今回が初対面となる。あれだけ通話してきたにも関わらずめちゃくちゃ距離があるのを感じて、少し微笑ましい。

さて、再会を祝して3人でニコニコしていたのもつかの間、ある一つの問題に直面する。

 

皆予定より1時間早く集まってしまった。

 

本来ならフライトの都合上早く到着する俺が博多のどこかで1時間潰して、あとから来るふたりと合流する予定だったのに

「「楽しみ過ぎて寝れなかった」」「「待たせるのは悪い気がする」」

と、気を使って来てくれたらしい。

遠足前かオノレらは。

 

ただ皆で行く予定だったポケセンも、その辺のカフェすら空いてない。結局何もする事がない我々は駅2階のロータリーでバスの発着場を眺めながら「君の膵臓をたべたいでここの風景映ったよね」とか、たわいも無い話をして30分暇を潰す羽目になった。

全く義理堅いんだか、なんなんだか。

 

・喋れよお前ら

 

>oo<「〜が〜でさぁ、どがすくんはどうだった?」

☠️「それはねぇ、〜でさぁ」

>o'ω'o<「……」

気の所為だろうか。

俺↔その他単体の会話は繋がるのに、

デデ公↔どがすくんの会話が全く無いのである。

なので必然的に道中のエスカレーターの配置も

>o'ω'o<…先頭

>oo<…真中

☠…後方

となり、完全に俺を経由したキャッチボールが始まっていた。

>oo<(大丈夫かなぁ二人…いやいつも喋ってるから大丈夫だろうけど…ちょっと気遣うか)

かくしてメガネ虫による「初対面二人、仲良くさせよう」キャンペーンが今後勃発していくのだが、道中画策が彼らにバレていなかっただろうか。

気を遣わせてる事に、気を遣わせたくはない。

ちょっと露骨な場面もあったかな…

そんな事を思いながら、エアホッケーでデデドガペア(組ませた)をダブルスコアで叩き潰したのだった。

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ポンコツ人たらし

 

唐突だが、デデンネという男はポンコツである。

勿論友達として尊敬すべき点は山ほど有るし、同年代の中でもしっかりしてる方なのだが、この旅の最中それを余す所なくポテンシャルを発揮してきやがった。ここで1つ紹介しよう。

 

ゲームセンターからラーメン屋に向かう途中の事である。

 

>oo<(それにしてもこいつら荷物多いな、リュックは兎も角大きめのボストンバッグまで…冬服だからかさばるのかな?)

歩いてる前二人のやたら大袈裟な荷物を見て、何が入っているのか少し気になった。

 

>oo<「お前ら、荷物結構重たそうだな」

☠「メガネくんは旅慣れてるからリュック1つで済むんだろうけど、初心者は何持ってきゃいいか分かんないからな」

>o'ω'o<「やっぱり冬服は嵩張るし、それに遊ぶ用の道具とk…」

>o'ω'o<「………………」

>o'ω'o<「あれっ!?」

>oo<「どした?」

☠「そういえばお前…」

>o'ω'o<「まりおかの場所にボストンバッグ置き忘れた!!!」

>oo<☠「「待ってるから早く行ってこい!」」


笑い半分/心配半分な我々を尻目に、彼は博多駅で風になった。

場所の目星は凡そ付いているし、時間も経ってないから大丈夫だろう。

それにしても…

どちらかと言うとデデ公の奴は完璧主義者寄りで忘れ物を諌める側だと思ったのに、まさかあんな自分から目印にしたクソデカバッグ(星条旗カラー)を忘れるなんて。

ちょっと意外だった。

やはり一緒に旅をするとその人の理解度がより深まるものなのかもしれない。

そんな事が浮かびながら、ドガスくんと来た道をのんびり引き返した。

 

・続 ポンコツ人たらし 


☠「あいつは予想を裏切らねぇな」

>oo<「意外としっかりしてるように見えて根はポンコツなのかもしれないな」


その後マックの前でドリンクをぶちまけガン萎えしてる客を尻目に「あの光景は忍びねぇな」などと話しながら待っていたのだが、ふとドガスくんが急に隣でモゾモゾし始めた。

 

☠「そういやメガネくん、幾ら?」

 

あ……?

なんだこいつは。唐突に金の話をして。

幾ら……?

俺の菊の花を売れと言うのか。

若干怯えながらも鞄からおもむろに財布を出す彼を見守る。

 

>oo<「……何が?」

☠「前回延期した時にキャンセルしたホテル代よ、さすがに申し訳ねぇからあいつ居ないうちに払っとこうと思って」

>oo<「うん……?あぁ〜……?」

 

実はこの旅行は一回やむを得ない理由で延期を挟んでいる。その時に予約したホテルの事を指しているのだと、ようやくここで理解した。

 

>oo<「えっとね、あいつが体調崩してから直ぐにキャンセルしたから料金かかってないんだ」

☠「ああ〜そうだったんだ」

>^^<「でも俺の前回の飛行機のキャンセル代なら払っていいよ!あれは確かね…」

☠「ばか、それは流石にちげーよ!」

 

内心、驚かされた。

こちら側から切り出していない支払いの話を自ら触れてくるとは思わなかったのだ。

舐め過ぎだろと思われるかもしれないが、経験上仲の良さにかまけてなあなあになってしまうパターンも起こりうるからこそ余計に意識した。

それにちゃんとデデ公に気を遣って、彼が席を外したタイミングで見計らっての発言だ。

素晴らしい。流石に大人の男だ。伊達に社会人張ってない。

まぁこのくだりは通話で一度済んでる話なのだが突っ込むのは野暮だろう。忙しくて忘れちまったんだな、うん。

人知れずドガスくんに対するこだめがポイントが高まっていた内に、息を切らせながらボストンバッグを抱えたデデ公が帰ってきた。

こいつも皆を待たせたら悪いからと全力で走って帰ってきたのだろう。額に浮かぶ汗がその証拠だ。

知らず知らずに俺の好感度を上げやがって…

人たらしな奴らだ。

 

・豚と骨、馬と鹿

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(博多駅ナカの名島亭。醤油豚骨の濃い味が明太ご飯の消費スピードをより加速させる。デデ公の行きつけらしい。)

 

>oo<「豚骨ラーメンを食うと福岡に来た実感が湧くな」

☠️「にしてもデデくん全然箸進んでないけど…ここ貴方の行きつけなんですよね?」

>o'ω'o<「いやぁ皆を待ってる間牛丼(大)と温玉食べちゃって…」

>oo<「はぁ!?」

 

馬鹿なのかこいつは。

 

☠「朝飯なら喫茶店とかでいいだろ」

>o'ω'o<「いやコスパを考えるとさ、高いじゃん」

>oo<「そういうものかぁ?」

 

〜完食後〜


>o'ω'o<「あっ……お腹痛い!!!!」

 

馬鹿なんだろうこいつは。

何でお金払ってまで自分の体を痛めつけてるんだこいつ。

☠「デデ君のトイレ入ってる累計時間タイマーで測ろうぜ」(コソコソ)

 

馬鹿なんだろうなお前も。

 

ホテルの入口分かんなくて15分間さまよい歩いた俺も大概なんだけどね。

 

・珍獣、はしゃぐ

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荷物をホテルに預け、地下鉄に乗って10分。

向春の暖かな陽気が三馬鹿トリオを迎えてくれる、ここは博多の大濠公園

寄り添うカップル、はしゃぐ子供。久々の運動で息切れする父親と、それを遠目から見守る母親。この世全ての幸福に包まれていた様な、穏やかな雰囲。そんな平和な大濠公園のド真ん中で、奇声を上げながら爆速で池を泳ぐ1隻のアヒルボートが居た。

道中ノリで借りてしまった以上、全力ではしゃぐのが対アトラクションにおける最大の礼儀だ。

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皆に笑いを届けに行くぞ。

いざゆけ珍獣軍団。

 

>◎◎<「うおおおおぉもっと漕げお前ら!目立て目立て目立て!!!!」

>o'ω'o<「ぬああ〜^」

☠「まずい!前方にオリジンナンバーズ(意味不明)の集団だ!躱せ!」

>◎◎<「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ座礁するゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」

バキバキバキバキッッッッ!!!!!

>o'ω'o<「勘弁してくれよ……」

 


30分の間、我々は風になった。

案の定、デデ公は船酔いした。

 

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ボートを返却し、公園のカフェまで戻ってきたのでひとまず休憩する事にした。

俺とドガスくんはスムージーを、彼にはボトルのミネラルウォーターを。スムージーの具材と調理の最中を興味深そうに眺めるドガス君にドリンクの受け取りをお願いし、う○こ爆発3秒前みたいな鬼の形相をしている彼に近寄った。

 

>oo<「ほら、もっと日陰の所に来いよ」

>o'ω'o<「いや大丈夫……大丈夫だから……」

 

誰がどうみたって大丈夫ではなかった。

ただ幸い天気も良いし風も心地良い。

暫くドガスくんと一緒にスムージーを味わっている間にデデ公は一人ふらふらと立ち上がり何処かに行ってしまったが、時速0.5キロほどの超鈍スピードで川辺の魚を眺めているのを確認したので、とりあえず気分が良くなるまで放っておこう。

腹痛に乗り物酔い、可哀想な位バッドステータスを持って産まれた男だ。

彼の生まれ持つ星に両手を合わせながら、軽くボート小屋の売店を一瞥するとそこはビタミンカラーの応酬。子供用のゴムボール。

それからラケットにフリスビー……

フリスビーだと……?

>oo<「赤色のフリスビー1つください」

考えるより先に体が動いていた。

こんな楽しいもの売ってたら買わないわけにはいかない。

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>o'ω'o<「うわぁ(絶望)」

☠「これは俺らお金出さないからな!」

 

何言ってんだお前ら。

公園遊びはフリスビーが1番って相場が決まってるんだよ!

 

〜30分後〜

 

>o'ω'o<「あーっ!ごめん曲がっちゃった!」

☠「墜落前のUFOみたいだな」

>^^<「大丈夫、取れる取れる!!」

 


軽く公園を散策した後。

あれだけ嫌がっていた2人も案の定というか、始まったら始まったでフリスビーではしゃぎ始めた。もう我々もこの幸せ空間の一部である。

こんな仲良さげな男達がネットのゲームグループで知り合ったとは誰も思うまい。

徐々に伸びゆく影と共に、ただ春の野の獣の様に原っぱを駆け抜けた。