A TRIBE CALLED QUEST
『The Low End Theory』
ブラックミュージックが好きだ。
EarthWind&Fireの様な煌びやかなパーティサウンドも悪くないが、ブンブン唸るウッドベースとカラカラに乾ききったスネアが脳に響き渡る物なら尚更良い。
今回はそんな大人の魅力溢れるジャズトラックを最大限に使いこなしたHIPHOPアルバムの魅力を記述していく事にする。
今作のアーティストA Tribe Called Questは主に90年代に活躍したHIPHOPグループで、De La Soul、Jungle Brothersに並ぶネイティブ・タンズと呼ばれる集団に位置付けられる。
これがどういうものか簡単に説明すると、一般的なラッパーのイメージである金・暴力・女……いかつい成金的思想を廃し、ただ仲の良い馴染み同士で楽曲を作るという物凄く平和な集団。(こだめがはここからHIPHOPに入ったので逆にギャングスタ・ラップが聴けないジレンマに陥っている)
ので、自然と楽曲も
このように落ち着いた楽曲が多くなる。
2pac、ノトーリアスBIGらの精神は現在シーンで主流のクラブミュージックに受け継がれ、ネイティブ・タンの精神はチル系HIPHOPに受け継がれるという訳だ。
アルバムの話に戻ろう。
表題である「The Low End Theory 」は彼らの作品の中では特にジャズ色が強く、これは外部から呼んだジャズベーシストの影響が色濃く出ているからだろう。
その意味は1曲目Excursionsから嫌という程分かる。
イントロからエロさ漂うウッドベースのリフフレーズに上擦った声が響き渡り、次曲Buggin'outは彼らの最高傑作と呼んでもいい程の出来で2人のMCの凄みをとことん味わえる。ガンガン響く重低音から始まるPhifeの捲し立てる様なスタイル、Qーtipのマイクチェックから始まるねっとりとした低めの思想家といった相反するヴァースが対立し合い、彼らのスタイルウォーズは極上のセッション。
また、何よりも紹介したいのが「Jazz (We've Got) 」
ゆっくりとした旋律の上をシームレスに遊び回る2人のmcのテクニックは言わずもがな、そして何よりも音抜きのクールさ。特に3;05の「underline,TheJAZZ」から1拍置いてスネアが入る部分が気持ち良すぎて毎回ここで頭を振ってしまう。
QーtipとPhifeという幼少の頃から息を合わせてきた2人のMCの妙技は是非とも聴いて頂きたい。特に待ち合わせの喫茶店、通勤電車で微睡んでいる最中垂れ流すだけで時間が吹っ飛んでしまう。
HIPHOPに興味のない方、興味はあるけど何から聞いていいか分からない方にお勧めです。