〜ぽ部珍味課活動記録〜 25年上半期総集編
うん、すまない。
またなんだ。
あの日の続きを今ここで語ろう。
〜春編〜
時は4月。
まずはヨドバシカメラのレストラン街にある、ステーキロッジさんのカンガルーステーキを食しに秋葉原へ集う。
http://www.yodobashi-akiba.com/restaurant/yy_stea.html
1品目
カンガルーのステーキ

総評.....☆☆☆☆☆
びっくりした。
美味すぎて何の感情も湧かない。
豚より脂が控えめで、牛より筋っぽくなく、それでいて肉の旨みが濃縮されている。本当にいい意味でただの美味しいお肉でしかなく、いちばん記憶に残っているのはここのお冷のタンブラーが恐ろしい程ひえっひえだった事。店員さんからガーリック系の濃いめのソースを勧められたが、間違いなくワサビ塩でいただくのがいちばん美味しいでしょう。あっという間に全員完食。
さて、これだけ食べても物足りない。折角男3人が集ったのだし、是非とも2軒目に行ってみよう!
という訳で調べて出てきたのがBar&Junk Mikaku。
https://mikaku-akihabara.gorp.jp/
みやびちゃんが繰り出した秋葉原にキャンプ場があるというトリビアに驚きつつも、歩いて10分ほどで無事到着。
地下に店を構えたバー、という事でいつもなら陰キャマインド的に入り辛かったのだろうが、この日は意気揚々と階段を下ることに成功した。
なにせバーの看板がこれである。

あに入らざるを得んや。

2品目
ワニの揚げたやつ
総評.....☆☆☆☆
店に置いてあった西川貴教トランプでババ抜きに興じていた我々の前に突如として現れたそれ。
お味はと言うと、血なまぐさい印象とは裏腹に臭みがなくてかなりタンパク。少し身は硬い気はしたものの、コリコリとしてて食感も良い。
カムラ「これはアレだね...イカフライだね」
ごもっともであった。
3品目
サメ肉の揚げたの

総評.....☆☆☆☆
サメ肉を揚げたやつにカレー粉の振ったもの。上にトッピングされているのはフライドガーリック。
実食するとタラなんかの一般的な白身魚のようにふわふわした食感で、何回か咀嚼すると少し血、肉!と言ったサメの主張が見え隠れするが、カレー粉とニンニクがその生臭さを抑えてくれる。塩振って焼いただけなら印象はまた変わるのかもしれないが、サメ肉をどう調理するか?の回答が完璧過ぎて、ただただおいしくたいらげる事が出来た。
ここで少し浮かんだ事だが、ジビエ料理は全体的に味が濃い為か酒によく合う。
この日も皆でウイスキーを頼んでちびちびやっていたが、チョコレートの次に合うツマミはワニフライなんじゃねぇかな…と本気で思う次第であった。
〜夏編〜
それから少し時は移り、7月半ばの事。
仕事終わりに池袋へ集った我々3人のお目当ては中国本土ではメジャーらしい逸品、ザリガニ料理。
https://s.tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13290910/
池袋駅は西口に降り立った我々を迎えてくれたのは、我々以外は客も店員も全員中国の方しかいらっしゃらないガチめの中華料理屋さんだった。当然日本語を喋るのは我々しかいない。少し海外旅行をしてるみたいで新鮮だった。
さて、本日は何を頼もうかとメニューに目をやる。


なんだこれ。
言葉が直訳されているのか、メニュー表の料理が一体何を指しているのか皆目検討がつかない。(我々が注文したのはまだ読める方。)
暑かったので冷たい飲み物を…とスライドするとこれまた漢字2~4文字の飲み物がズラっと勢揃い。
とりあえず椰汁がココナッツミルクを指してそうな事だけはわかったので僕とカムラくんはそれを、みやびちゃんはもうマジで1ミリも検討がつかない王老吉をチョイスした。
番外編
椰汁
総評……☆☆
なんてことは無い、ただのココナッツミルク。初めて飲んだが甘みが強く、これ単品だけで飲み干すのは個人的には少し辛いと思われる。
だがこれが今後大いなる助けをもたらしてくれる事を、我々はまだ知らない。
総評……☆☆
我々の前に運ばれてきた、茶色い謎の液体。
怪訝な顔をしながら口付けるみやびちゃんを、固唾を飲んで見守る。
はて、そのお味は…?
みやび「あっリプトンだこれ」
>oo<「へえっ!?」
拝借して、恐る恐る1口飲んでみる。
>oo「あっ…これはリプトンだねぇ」
カムラ「紙パックで飲んだ気がする」

調べてみると中国ではかなりメジャーな漢方系のハーブティーらしく、効能的には口内炎やニキビに効果があるらしい。それにつけても名称自体はハーブティー…らしいが、とにかく甘ったるい味わい。なんか確かに女子がよく自販機でこんなん買って飲んでたな…という印象。

4品目
ガラスカレー
総評……☆☆☆☆☆
脂と塩味が合わさってめっっっちゃんこ美味い。
頼む前は「カレー…?中華料理にカレーライスってあったんだっけか?」と疑問に感じていたが、実際にお通しされたのはなんてことは無い、カラスカレイの塩焼き。
中国本国でもカレイは一般的にレストランでよく食卓に上がる食材であるらしく、基本的には蒸し料理が基本との事。僕自身カレイは煮付けでしか食べたことが無いので塩焼きにして頂くのは新鮮だったが、あまーい脂に少し濃いめの塩っけが重なって超クッソ激烈に美味しかった。
ザリガニ料理を待つ間、ふとテーブルの上に何か2つ小箱が置かれているのに気がついた。なんか形状的にラブホの枕元に置いてありそうだな…とニヤニヤしながら蓋を開けてみると、そこにはこんな物が入っていた。

なっ……
なんだこれは……!?
みやび「おいこれバリアンで見たぞ」
だまらっしゃい。
しかも漁ってみると数十枚単位でギチギチに詰められている。
>oo<&カムラ「めっちゃ大量にあるwwwwwwwww」
(ちなみに中身はザリガニの殻を割る用のビニール手袋でした。生きててすみません。)
閑話休題。

5品目
ザリガニの盛り合わせ(麻辣風味)
総評……測定不能
辛っっっっっっっっれぇ!!!!!!
すみません、本場中国の麻辣味をナメてました。
僕にこの辛さは無理です。〇んでしまいます。
しかしザリガニ自体のお味は本当に感動する程美味しい。特にミソがまぁ濃厚で風味が良く、これ以上食ったらお腹が>o'ω'o<になるぞ!
という脳からの伝達を丸無視してカッ食らった。ただ胴体の過食部分が1匹で1cm食えるか食えないか程の短さなのが腹ペコメガネ虫には少々残念な所ではあった。(その分ひと鍋に何十匹も入っているのでしっかり食べ応えはある。)
しかし汁に漬け込まれたコーンやレンコンなんかのお野菜に関してはもう辛過ぎて「今日はけつあな確定だな……」とひとり静かに心の中で涙したのは記憶に新しい。
椰汁くん、本当にありがとう。君がいなかったら到底食うことが出来なかった。ありがとう、本当にありがとう……。
甘めのドリンクを頼んでいて本当に助かった…
なお、店員さんから「このスープに麺入れて食べると美味しいよ」と優しくアドバイスを頂戴したのだが、もう精魂付き果てた僕らは
「ハハ…ッ」
と、日本人らしくお茶を濁していた。
ザリガニ自体は美味しかったので、余程辛いものが好きな方で無ければニンニク味の方をオススメする。
6品目
ウシガエル1匹
総評……☆☆☆☆
写真右。イカニモゲテモノ系のあんちゃん。
シンプルな丸焼きという見た目のインパクトが強烈過ぎて一瞬躊躇ったが、箸をつけてみると所謂鶏肉系のタンパクな味で中々イける。お腹周りのお肉もふわふわ柔らかな食感で食べ易いが、脚部分は別格。噛む事に塩と染み出した肉のエキスが合わさってたまらん美味しさ。調べてみるとフランスなんかでは脚の部分だけ唐揚げにしたりソテーにしたりするそうなので、重宝される理由がなんとなくわかった気がする。
……今回は以上。
ザリガニ美味しかったからニンニク味にすりゃ良かったな〜と今でも後悔してます。きっとガーリックシュリンプみたいな味わいになってたのかな…
ちなみにこの後炒飯と胡麻団子(何故かメイン料理枠に入っていた)を食したが流石は本場中国。
まァ〜〜〜安心する美味しさ。
ザリガニ目当てで行くも良し、本場の味を楽しむも良し。興味のある方は是非一度訪れてみてはいかがだろうか。
去年、春、夏と立て続けに行ったぽ部珍味課活動。最初は冗談半分、ハナシのタネになればいいな〜と軽い気持ちで参戦していたが、食に対する敬意が益々向上していったように思うので、
やってよかったな……。
と、心の底から思う次第です。
この世のものを分け隔てなく美味しく食べられるよう施してくれた料理人や、特別な調理をしなくても、塩振って焼いてれば美味しく食べられる家畜たち。
彼らに感謝の祈りを捧げつつ、今日も明日も明後日も。
元気出して行きましょうかね。
ご馳走様!
美味しかったです!!!
〜次回へ続く〜
サマソニ2025に出撃する男
夏のボーナスも入ったので久々に遊び散らさんと今年のサマソニTOKYOについ申し込んでしまった。反省はしてない。
フェス自体は昨年ビバラに参戦したので大して間は空いてないが、夏フェスとなるとコロナ前に行ったロッキンかフジロックが最後になるだろうか。歳も歳だし夏フェスはもういいかな〜と思っていたが、酒飲みながらFall Out BoyのYouTube観てたらなんか応募していた。まあその位じゃないと出不精の私はどこかになんていかないのですが。
今回のタイムテーブルはこちら。

赤丸着いてる所が絶対見ておきたい演者。
これを見てわかる通り、ぶっちゃけお昼まで食指が動かない。SixTONESもLiSAも恐らく生で見る機会など今後無いと考えれば行ってもいいのだけどファンが多くて揉みくちゃにされそう、朝から疲れたくない、どっちともそこまで興味が無いので別に無理して行かなくても良いかなと。
唯一11時台のAve musicaに関しては地下に飼われたDiggyが泣きながら作詞してるとの噂を耳にしたので観といても損は無いのかもしれない。が、こちらもアニメの内容を1ミリも知らないので正味モチベは高いとは言えない。ひとまず朝〜13時までは物販見たりご飯を食べたり、色々ふらついているものと思われる。
13時45分、ここから本格的に忙しくなってくる。
まずはマンチェスター出身のHot milk。

代表曲「Candy Coated Lie$」がちょうど出始めの時に聴いていたが、よくいえばまとまった...悪く言えば十把一絡げのポップスだな...とタカをくくって放置していたものの、そこから年々技術力が急上昇。聞いて貰えばわかる通りバックバンドとスクリームの質が明確に上昇し、ヘヴィな音作りも格段と上手くなってきた印象で、エモの未来を担ってくれそうな雰囲気を醸し出してくるようになった、こだわりメガネイチオシの若手。
そして次のお目当て、15時ジャストのMONOBLOC。

年明けの ロッキングオンソニックはどっち行こうかな〜(結局忙しくて行けなかった)と悩んでいた頃、演者リストにて後述のBLOC PARTYと名前を見間違えたのが出会いの始まり。
THE STROKESとRadioheadをごちゃ混ぜにして現代風にアレンジしたような曲作りが特徴で、まだE.P1枚しかリリースしていないものの新人バンドにしては恐ろしく出来が良く、キャッチーなのに纏まっている。The1975の1stアルバム以来の衝撃。
近い将来覇権を取るバンドなので、気軽に来日してくれる今のうちに観に行かねばなるまい...!
16時台もまたドタバタしていて、YUNGBLUD、ウルフルズ、HYDE、amazarashiと毛色の違う面々が揃う。
一瞬悩んだけどこれはウルフルズでしょう。

HYDEとかamazarashiとか、1曲2曲は知ってるんだけど詳しくは知らないアーティストの舞台を見に行った方が新しい発見があったりして良いんだろうけど、トータス松本の魅力にはどうやっても逆らえない。暑さにやられた元気を一旦リチャージングさせて頂きましょう。
有力候補のひとつだったYUNGBLUDは大学時代に友人と一緒にCD買いに行った思い出がある。ただ昨今流行りの型に嵌らない型にまんまと嵌ってしまっている感じがしてあんまりピンと来なかった。僕の中では1stE.Pでお腹いっぱいです。
ちょっと休憩を挟んだ後、第2の本命BLOC PARTYに参戦予定。

浅そうなjpopに見せかけたプログレド変態バンドOfficial髭男dismは何としてでも見に行きたい気持ちが強く、最初はこっちを観に行くつもりだった。
けど...やっぱり00年代のギターロックに憧れ捩れた陰キャにとってBLOC PARTYはArctic Monkeys、Franz Ferdinandに並ぶ神様に近い特別な存在。どうやっても観ずには終われない。
複雑なリズム、難解でクセのあるギターリフ、それでいて引き込まれるオケレケの透き通ったボーカルワークはドス黒い青春時代を送った僕を慰めてくれたオカズと言っても過言ではなかった。
しかも彼らも年々モチベが高い傾向にあり、未だに若手のようなバンドサウンドをハイペースでリリースしてくる。今回のサマソニでも高い演奏技術を惜しみなく披露してくれることだろう。
陰キャなら尚のことPorter Robinson行けよ?
いやそうなんだよな...!遠出から帰る電車の中で1枚通して聴くWorldsは一際格別で、コロナ禍の孤独な時期はずっと彼に勇気付けて貰っていた思い出もあるから、尚のこと後ろ髪を引かれる。普通にしれっとこっち行ってましたとかも余裕で有りうる。どちらに転んでも全くおかしくはない。
ブランデー戦記もLaura day romanceと並ぶ次代の邦ロックを引っ張ってくれるバンドなので応援はしてるが、如何せん同タイミングのメンツが強過ぎる。いずれどこかでお目見えする事だろうし、今回は辞退。
18時50分、満を持してのBABYMETAL。

もう海外公演が基本になってしまった彼女達。日本に凱旋することはめっっっったにない(しかも当たらない)のでフェスで観れるのは本当に幸運だと思った。
最初はアイドルがメタルかよ...とテンプレートな食わず嫌いをしていたが、我らがTak Matsumotoとコラボを果たし、あのSabatonのボーカルがドスの効いた声で「お・ね・が・い〜♡」と叫んでいるのを聴いて大爆笑したことにより、完全にオチた。
時間の都合上15分くらいしたら途中で抜け出さないといけないのが本当に寂しい。
Electric CallboyかBloodywood呼んできてくれたら話は変わるかもしれないが。
19時25分。
今回の目玉、FOB。

恐らく今回の洋楽勢の中ではトップクラスの知名度を誇り、マンウィズとのコラボ曲や本国版ベイマックスの主題歌immortals、The Phoenixは野球、サッカー等のスタジアム内で流れまくっているので知らずのうちに一度は聞いた事がある方が多いかもしれない。
彼らの代表作Infinity on Highはドス黒青春時代のオカズの1枚であり、1曲目のthrillerが流れた瞬間はいつだってキラキラした若い日々(そんなのものはありもしないのだが)を思い出させてくれる。
その後一定迷走期を経てリリースされた最新作So Much (for) Stardustの徹底した原点回帰により勝ったわこれ...(何に?)と嬉し過ぎて涙を流した事は記憶に新しい。いや、いいんだ。パトリックはいつだっておれの希望そのものなんだよ。
その後はどうしようかね...
The Prodigyに行ってもいいけど、テクノ系は殆ど触れてないから楽しめるかは不明だし、大人しく帰るかAI&jujuを観つつ帰る時間を調整する事にしましょう。
しかし行く前からこんなに楽しめるなんて。
最初はチケ代高ぇなぁ...相変わらずアイドルばっかだなぁ...と渋っていたが、やっぱり夏フェスは最高なのかもしれない。
体力もつかなぁ.....
一般男性が映画キングオブプリズムを観に行くと凄い
お疲れ様です。
こだわりメガネです。
人間20うん年も生きていれば、人生に多少なりともマンネリを感じるもの。趣味をずっと続けるのも悪くないのですが、自分の生活範囲から全く違う何か新しい事を体験していくのも、浮世を生きる上では欠かせないような気がします。
そういった思想の元、ひとりで劇団四季、ぽ部ゲテモノ科に続く新しい事チャレンジの続編という事で
一般男性が初見で女性向け応援上映に行ったら何を思うのか?
をチャレンジしてまいりました。
映画の感想(ネタバレ含む)の為、これから劇場に足を運ばれる方はご注意下さい。

某日、某映画館にて。
この日観に行くのは最終上映のレイトショー。
よく通う映画館には公開されていなかった為、仕事終わりの電車に乗りこみ駆け込んだ。
上映まであと30分。チケットは既に発券してあるし、早速場内で広告を観ながらのんびりしても良い。ただ覚悟を決めてきたはいいものの、やっぱりどこか心寂しくモジモジしている自分がいた。
とりあえず施設内のうどん屋で映画のチケットを観せれば割引が効く、ということで戦の準備を始める事にした。
大好きなカルボナーラカレーうどんをかっこみ、再度場内に訪れる。比較的のんびり食って行ったので、上映までは残す所あと僅か。
覚悟を決めてきたものの、応援上映の流儀も知らなければ、作品の内容自体もわからぬまま。
いまだに「大丈夫かな...なんかおれ粗相とかしないかな...」とモジモジが止まらない。10分前のギリギリのタイミングで入場することにした。
チケットをお兄さんにお渡しすると、ちょっとしたハプニングが。
スタッフ「F1はシアター5番になります〜」
>oo<「...ン?」
スタッフ「.......あっすいません、シアター7番です」
>oo<「...ゥスッ」
そりゃこの時間に男が来たらF1観に来たもんだと思うだろう。俺だってそう思う。二度見して来たスタッフさんは何にも悪くない。
でもやっぱり、「世間的には変なのかなぁ...」と、後ろ髪を引かれてしまったのは否めない。風邪をひいた樺地みたいな、しょうもない返事しか出来なかった。
最悪の出だしだ.....
竦んだ足でいざシアターへ。
いざ入場
僕が数日前にネット予約した時よりもお客さんの数は大分増えた様で、10分前にも関わらず続々とお客さんが入ってきた。公開してから早めに観に行ったとはいえ、改めて人気の凄さを思い知った。
上映5分前。
綺麗なお姉様方にどんどん包囲される、明らかに場違いな短パン男。
もう席も7.8割方埋まってきたんじゃないだろうか。当たり前だが全て女性。
「そろそろ始まるね〜」と、カンカンバッジがいっぱい付いたバッグの中から次々に光る棒を取り出し始めるお姉様方に怯え散らかす、生足スネ毛のマーメイド。
早く真っ暗になってくれ。
このむさ苦しい異物を、さっさと闇で覆い隠しておくれ。
〜洗礼〜
場内のライトが消えても、未だ恐怖体験は続く。
消灯して安心したのも束の間、場内全員が揃って赤ランプを灯し、映画泥棒さんに向かって
「映倫ありがと〜!」
「(映画館名)ありがと〜!」
と感謝の意を表し始めた。
.....
ビックリした.....
バンドのライブに行ったことは数あれど、アイドルやアニメのライブには一度も行ったことがない。初めて間近でサイリウムを見た僕からすると何もかもが新鮮で、応援上映というものがどんなテンションで行われるかを肌で体感した。
しかしこんなにもコールが揃うものなのか?
応援上映っていつもこんな感じなの?
「タカラトミーありがと〜!」
.....いやすげぇな。マジで。
映画上映中
早速、説明抜きで主人公然とした青髪の男の子のライブが始まる。
楽曲としては正統派アイドルといった曲調で何も言うことは無い.....のだが、
明らかに映像がおかしい。
それまでステージの壇上に居た男の子がサビ部分に突入すると、よしきた事かとステージを飛び越し単独で成層圏を飛び越え、宇宙に出発したかと思えばファン(幻影?)と手を繋ぎ、機動武闘伝Gガンダムの如く地球を包囲し始めた。

(イメージ図。マジで開幕これ。)
僕は悟った。
これは考えるものじゃない。
感じるものなのだと。
レジェンドやりたい放題
先に言っておくとこの映画、上映時間が60分しかない。その為シナリオはほぼあってない様なもの、これが初見勢的には大助かりだった。
劇中、過去のトップアイドルのライブをネプリーグの漢字答えるヤツみてぇなタイムマシンに乗って観に行く展開が繰り広げられるのだが、そこで登場するレジェンド達を担当するのが浪川、三木眞、森久保、関俊彦の大御所4人。
一体この方たちが何度女性ボイスドラマで起用されたことか。
それを何度KUMONの送り迎えで聴いたことか!
(こだめがママは六神合体ゴッドマーズの明神タケルにガチ恋していた歴戦の夢女)
今更だが、僕が劇場にやってきた理由は彼らにひと目会いたいから。
偉大なる母によって英才教育を施された僕としては、この方々が歌う所を見たい!という思いでやって来たのだ。
そして待ち構えていた僕の前に早速飛び出して来たのが、デッキブラシで飛ぶ魔法使いの浪川。

うん...
うん!?
まあ、きっとそういう人なんだろう。
かっこいいのにちょっと浮世離れしたトンチキなキャラを演じるのが得意だもんね。
で、森久保は何をしていたかというとリングの上で踊りながら大乱闘を繰り広げていた。

.....
そ、そうだね、解釈一致だ!
やはり森久保は俺様系してる時が一際輝くぜ...!
そして関俊彦。
関俊彦といえば忍者の先生たち、最遊記の玄奘三蔵にモモタロス。古いものだとガンダムWのデュオ等平成を生きるオタクとしては決して避けては通れない存在。キングオブ平成と言っても過言では無い。
さて、早速お手並み拝見...

あれ?
三蔵!?(違う)

曲的にどう考えてもシティハンターのオマージュなのだろうが、金髪で拳銃ぶっぱなす関俊彦は僕にとっては玄奘三蔵一択なのである。
この20年振りの光景に興奮を隠しきれなかった僕はテンションかわ上がりまくり、彼がゲーミングデンライナーに乗り込んだ瞬間のコールアンドレスポンスをこっそり行っていた。
野太い声を出さないよう、裏声で。
「待ってくださ〜い!」
>oo<「マッテクダサーイ!」

なお、無事定刻発車され置いていかれた模様。
その後現れた茶髪ミディアムヘアの三木眞一郎も清楚系腹黒王子様といった然。(ロックオン.....?)

なんというか、本当にイメージ通りだ。
声優には自然とパブリックイメージが着いてるんだな〜と再認識したのは面白い所。
(余談だが、この場面のコールアンドレスポンスは明らかにツッコミ所過ぎて爆笑した)
劇中流れる小室ミュージックも相まって、皆確かにレジェンドって感じで非常に格好良かった。
こういうのは男の子弱いですからね、昭和ライダー見参!みたいな。
地獄でなぜ悪い
レジェンドアイドルを一頻り見終わった後、タイムマシンの不調により地獄に落ちた(比喩なし)各アイドルグループが生存をかけたダンスバトルが勃発。
その中でも一際輝いたのはWITHというグループ。

なんというか全体的に顔が丸く、どうみても子供向け番組のビジュアルで言動もやたら幼い。(赤い子はマジヤッベーとチョウスッゲーしか言わない)
大きくなったら勝新太郎か藤岡弘、になりたい僕からすると大して刺さらないんじゃないかな〜とスルーを決め込むつもりだった。
が、ライブではその幼い表情が一変。王道EDM風の楽曲でキレキレの低音高速ラップを展開し、キレキレのダンスを披露する。
はて、君たちは全盛期の嵐か.....?
と思えるほどのパフォーマンスは大人び過ぎて完全にブッ刺さった。忖度抜きで本当にかっこよかったのである。
彼らが正式な本編内ユニットかどうかは諸説あるようだが、個人的に本作中1番かっこいい楽曲で、今でも普通にSpotifyのリピート欄に入っている。
それもKORNとAlice in Chainsの間に。
WITH、マジ闇の中の光。
パワフル過ぎるポジティブさ
この映画の何が良かったか?
それは間違いなくパワフル過ぎるポジティブさ。
どれだけキャラが面倒くさがり屋でも、どれだけ闇堕ちしたとしても、徹底して「いや俺の方がダンスうめーから!」
という思想が常に根底にある。
昨今の冷笑的な空気をものともしない、俺を見ろ!俺を見れば元気が出るぞ!というプラスエネルギーが劇場内に溢れかえっている。
前述した通り、これは例え自らが地獄に落とされようが、月面に飛ばされようが常に徹底している。己を見失う瞬間、ネガティブなパートが皆無だからこそ、常に一定の熱量を保ったまま楽しむことが出来た。
しかも別にそれも嫌味ったらしくないのもまた良い塩梅で、劇中タイムマシンで初めて訪れた場所は主人公勢の初のお立ち台。緊張と技量不足のせいか何回もミスする苦渋を味わっている。
その過程があった上で完璧なダンスを披露されるものだから、裏で血のにじむような努力を積み重ねたのだろうなと想像に易く、初見の僕からしても胸に込み上げるものがあった。
また、本当にフレーバー程度に語られる設定も好印象だった。
このキングオブプリズム、従来のアイドルとは一味違いアイススケート靴を履いて行う。
従来だと観てて楽しい演技を披露したものがコンテストの勝者.....だったのが、いつの間にか連続ジャンプ重視の配点至上主義に変わっていったらしい。
エンタメ系で優劣を付ける程難しいものは無い。
まさかこの作品で再考させられるとは思いもしなかった。
ハジケて混ざれ
通常のアイドルアニメなら普通に歌って踊るだけで済むはずだが、このキングオブプリズムという作品は一味違う。
曲のサビに入るとなんというか...形容し難いハジケバトルと、それに付随するハジケまくりのコールアンドレスポンスが展開される。
ある時は体育祭での幻術。
ある時は学園内での幻術。
ある時は地獄。
果ては宇宙。
マジで脈絡もない情報が頭をぶん殴ってくる。
平気でダンス中裸になって吹っ飛んでくのにも関わらずキャラも会場内も「流石じゃのう田沢の九九は」と言った具合に平然と受け入れるので、あれこれおれがおかしいのかな...と思っていたが、後日ファンの方の感想を見るにこの世界がおかしいだけの様だ。
ウケを狙いに来てるのかマジで言ってんのか判別不可能過ぎて、並のギャグアニメよりよっぽど腹を抱えて楽しめる。ただ折角モデリングも曲もダンスも一等素晴らしいものなのだから、せめてフィナーレを迎えるまで大人しく演技に魅了されたい...という気持ちもあった。
だが彼らは僕の思いなど露知らず速攻ヘリコプターを撃墜し始める。
ライブ演出が極めて凄いものであるぶん、逆に領域を展開された瞬間スッ......と賢者タイムのように現実に戻されてしまっている感じは否めなかった。
最後に
めちゃくちゃ面白かった!
最初はハチャメチャに緊張していたものの、お金を払って見に行って良かったと、忖度抜きでそう思う。夏にも負けない程の熱気(ツッコミ所)に溢れているので、僕と同じように初見の男性にも是非楽しんで頂けたらと思う。
しかしこれ、元々はプリパラの派生型だったんだね...(しかもタツノコプロ)エンドロールにガッツリプリパラのアニメが流れてきてビックリしました。
ただ最後に、一つだけ気になることがある。
映画を観に行った後、何の気なしに感想のツイートを上げたら想像よりもファンの方々から反応を頂いてしまった。
何も知らないのに界隈を荒らしてごめんなさいの意味も込めて今こうして感想を書いているのもまた事実...なのだが、バズった文章にご注目して頂きたい。
僕は一言もキングオブプリズムなど乗せていないのである。

関俊彦のGet Wildが余程集客を成功させているのか、それともどこからか見つけ出せる要素があったのか。
未だに謎のままである。
~完~
劇団四季を観に行こう
人生で1番好きな○○はなにか?
という命題に対して、なかなかサックリ答えられない自分がいる。
人生を彩ってくれた大切な作品郡が脳裏を駆け巡り、これが一番と簡単には出てこないのだ。
ただ、この〇〇の対象が「漫画」だったら胸を張って言える。
「黒博物館 ゴーストアンドレディ」だ。
僕の陳腐な語彙力で表せるような作品じゃないので
作品の説明を放棄します。
とっとと原作を読め。
作品の完成度が高い事もあり、早々とメディアミックス化の願いを放棄し時は流れ約10年。
なんと!
かの有名な劇団四季で舞台化されるという衝撃の情報を目にしてしまった。
なんということだ……
いい歳した男がひとりでミュージカルを観に行くという若干の気恥しさを心にしまい込み、早速休みの日のチケットを入手。
劇場最寄りの浜松町行きの電車に飛び乗った。

恥ずかしい恥ずかしいと言っておきながら、実は劇団四季を観に行くのは人生でこれが2回目。
学校の校外学習でウィキッドを観に行った以来だ。爆睡するクラスメイトを横目に「俺は今、とんでもないものを観ている!」と興奮を覚えた記憶は未だ新しい。
ただ……
どこで刷り込まれたのかはわからないが、ミュージカルは妙齢の女性の趣味、という認識が頭にこびり付いているせいで、数ある娯楽の中でも敷居が高そうに感じてしまい、中々観に行く勇気を持てなかった。
ドレスコードとかあったらどうしよう……と怖がって着てきたワイシャツの裾で額を拭いながらチェックイン。
どうしよう。
やっぱり観劇に来るお客さんって上品なおば様ばかりかな……と戦々恐々としていたが、会場を見渡すと男女の割合がほぼ5対5。下は小学生、上は白髪の老人と様々な年代の人々がラフな格好で劇場内を闊歩しており、中には僕と同じようにひとりで観に来たお客さんもちらほら見かけて、イメージの剥離に若干驚きながらも胸を撫で下ろす。

中でも人が過密状態だったのが原作者、藤田和日郎センセイのサイン盤。スマホ片手の老若男女がお行儀よく列を並んで写真を撮っていくのを見て、色んな人たちから愛されてる作品なんだな……と少し嬉しくなる。

開演まであと20分ほど。
僕の席はA席の1番左端。
格安なこの席がどの程度見物できるのか幾ばくか不安だったが、比較的前列に近かった事もあり、問題無く見ることが出来た。
以下、観劇の簡単な感想。(ネタバレ含む)
よかったところ
・舞台ならでは、コマ外の描写

灰色の幽霊、グレイは劇場を抜け出してからというもの常にフローのそばで喜怒哀楽を振り回しているので、こいつ平常時は何してるんだろう……なんて考えもしなかったけど、こと演劇となると舞台上のキャラクターから散々無視されるグレイを拝めるので結構面白い。
基本フローが何かしている時は腕組みしたりソファに転がったりしながらじーっと眺めているだけで、コイツコマの外ではこういう表情してたんだな……という新たな発見が出来たのは舞台ならではの魅力だなと思った。
やっぱり原作の大好きなキャラ達が表情を変え、生きて、動いていてくれるのは何より嬉しいもんですね。
・演出、凄くね?
舞台の基本はドルーリーレーン劇場なんだけど、そこからちょっとセットに手を加えただけであら不思議。
病院、船着場、雪原と雰囲気がコロコロ変わるのがすげぇ〜!と思いました。(あとどこどこに遠征する!ってなった時に後ろで地図と矢印表示してくれるのめっちゃ分かりやすい)
それと演出では「何で人が浮いてるの?!」「何で直立で横滑りしてるの?!「何で扉を通り抜けられるの?!」と初めてマジックを見た小学生の如く興奮しっぱなしで、こんなに新鮮に何かを楽しめたのは久しぶりだったような気がします。
・過去描写のテコ入れ
グレイが生前、ジャックとして存在していた頃のお話が原作よりボリュームアップ。
特に酒の飲み比べの場面では十数人が小さいステージの上で入り乱れハイテンションのまま高速でダンスするんだけどこれがまた迫力満点。何か自分がイメージしてるミュージカルそのものって感じがして一番盛り上がりました。
あとその後原作通りベッドシーンが入るんだけど、エロ描写がダメっぽいのでコトの最中をシーツで覆い隠した後ナレーションで「ご想像にお任せします」とか言われたもんだから普通に声出して笑った。
フローが小声でや、やだ……ってチラチラ見ながら照れてる(どうやらアドリブっぽい)のも僕の心のグレイがニヤニヤしっぱなしでした。

(最盛期を鮮明に描いたお陰で、裏切りに始まり裏切りに終わる彼の凄惨な人生により感情移入出来た。)
・動くデオンが美麗過ぎる

原作ではホールの奴隷と言われてしまってもいまいち否定出来なかったポジションだけど、今作では女性の身でありながら剣の腕ひとつでのし上がってきたという設定が追加され、騎士団長としての自信と矜恃、男性として生きねばならなかった意地と虚勢とが細かい仕草に表れていて、「絶対に近付いてはならない悪女」感が存分に発揮されてとっても良かったです。
・エンディングの追加要素
完璧。
こればっかりは原作超えていたように思う
原作ではフローの看取りの際、傍らには猫一匹のみという寂しいものだったのに対し、舞台ではクリミア戦争時代の戦友たちも見送りに来てくれていたのが本気で嬉しくて気が利いてるな〜という印象を受けました。
それと僕が原作で一番大好きなシーン、フローがグレイを一目見ただけでおばあちゃんから恋する少女に還るあの瞬間までも完璧に再現されていて、その後もカーテンコールに至るまでえんえん大号泣してました。

(影の道を歩んでいたグレイが大切な人のもとで陽の光を浴びる。これだけでも粋過ぎだったのに……!)
・どこで拍手すればいいんだ……!
シーン毎に拍手するという観劇特有の例のタイミングが本気で掴みきれなくて、めちゃくちゃすげーなと思ったシーンですぐ場面転換でシン……となり
「えっ今の拍手しないんですか!?」
ともどかしい。
ただ幕引きの際、俳優が一斉に並んでお辞儀する時間があるのだが、こちらも総員でスタンディングオベーションでそれに応える時間は優しさに満ち溢れていて、とても居心地のいいものだった。
さっきまで激しく対立していた人たちが笑顔で手を振ってくれているのってなんかほっとするし、言葉では表せない嬉しさがあるよね。
退場の際、フローとグレイは左右別の舞台袖で帰ってしまった。やっぱり二人は分かつ定めなのか……と残念がっていたら最後戻ってきて幸せそうな顔をしながら仲良くハグして帰っていった。それを見てまた咽び泣く一般25歳男性。
150年間好きな女待たせやがってこの野郎……
気になる所
・女騎士、デオン・ド・ボーモン
一番焦ったかもしれない。
性別が原作、史実どちらともぼかされている不可思議な部分も魅力だと思っているので、普通に男装の麗人でしたって言われちゃうと何だか神秘性に欠けていて……
勿論家父長制が現代よりも過激だった頃のお話だし、既存社会に抗う女性というテーマが根幹にあるからだと解釈出来るけど、もっと人を〇したいという望みだけで蘇る純粋さも好きだったから、正直男性社会に居るの辛かったとかの弱音は聞きたくなかった。
その剣は男でも女でもない自らの信念そのものだったはずでは……?

(1ミリも理解出来なかった存在だからこそ、この寂しげな笑みが一層光って見えた……)
・原作要素のオミット
作劇上仕方ない事だが、博物館内でのモノローグはおろか、重要なファクターであるかち割れ弾の存在も無かったことにされている。その為慟哭したフローが黒幕相手に撃鉄を引いてしまう描写もカット。
えっ……?
その銃撃たないの……?
と思った読者は僕以外にも沢山居た(はず。)
人命最優先という彼女の核全てを放棄し、剥き出しの感情のまま仇討ちをしかける人間の歪さが描写される原作最大のクライマックスが抜けてしまったのはすこし残念。
絶望に飲み込まれてしまったフローをグレイが間際に「幸せに生きて欲しい」という優しい呪いをかけて、彼女の前から姿を消すシーンは極めて重要だと思っていたので……
ただそれ以外での原作要素の排除はまあ仕方ないかな?くらいで特に気にならない。というかオリジナル要素を違和感無く織り交ぜる脚本構成の凄さにびっくりしてました。
・剣戟シーンが薄い
ここのカット、あのコマかな……?と思い出せる位には再現されてました。
ただやっぱアクションは薄かったかな……
生霊関係も九割方カットされたし……
別に完成度がどうこうってわけじゃなく、劇の内容自体が二人の関係性を重きを置いているので元からアクション要素はアクセント程度で想定しているんだろう。
あと如何に藤田センセイのセンスがズバ抜けていたかも再認識出来たので、そこも収穫のひとつ。

(マンガとしてのケレン味、演劇としてのリアリティの狭間で何処をどれだけ切り取るか?アクション構成の苦悩がかなり見て取れた。)
総評
めっっっっっちゃ面白かった。
カットされた描写は勿論有り、少し肩透かしを食らう所もあったが、初見の人が短い尺の中で話に追いついていけるようにお話を繋いでくれているので、どんな人にでもこの作品の魅力が伝わり易くなっている気がして、これを機に黒博物館を語り合える人がどんどん増えてくれれば、原作ファンからすればこんなに嬉しいことは無い。
あまり楽曲には触れてこなかったが、ミュージカル特有の「それ説明する為に歌うんだ……」という感想は消えなかったけれど、1音たりとも外さない伸びやかな声に終始感動しっぱなしで、改めて劇団四季の凄さを思い知らされた。
ミュージカル、また暇があったら見に行ってもいいな。
そんな事を思いながら劇場を立ち去った。
近年稀に見る、充実した休日でした。
〜[完]〜
〜ぽ部珍味課活動記録〜
これは突発的にジビエ料理に挑み出した3人の男たちの物語である。
今回の参加パーティ……
>OO<(ぼく)
……田舎の岩手の食卓に出されるイナゴの佃煮やマムシ酒(と称するが実際はそこら辺のアオダイショウを捕まえ焼酎で漬けたもの)等を断り続けた結果親戚どもからこれだから「小洒落たしてぃぼぅいは」と批判された悲しきモンスター。
カムラくん
……同年代でも1番おっとりとした性格のハマの男。
今回の企画の発起人でもあるが、本人の経験的にはジビエハンバーグを食したことがある程度でレベル的にはぼくと同じくらい。
みやびちゃん
……初対面時、ぼくとウマが会いすぎて一緒に始発で帰って行った伝説の男。
しかしイナゴは旨いと豪語する為、最終的には分かり合えないタイプの男。
やって来たのは神田駅にあるジビエ料理専門店「罠」。

神田の商店街の路地裏にポツンと位置するにも関わらず店内はサラリーマンたちで埋め尽くされている。
なるほど、これは予約が20時半にしか取れないわけだ。
感心しているうちに金髪のやたらフレンドリーな女性店員さんに席に通され、少しぬるめのビールジョッキを片手に三人で乾杯。それから数分もしないうちに軽めのユッケとつまみ野菜が提供される。

①シカ肉のユッケ
★
一切れ噛んだだけで「野生」の味が口いっぱいに広がる。
少し固めで食べ応えがあり、臭みの強い馬肉のような感覚。
何もつけずに食べて欲しいと、恐らく肉本来の味わいを感じて欲しかったのであろう説明を受けたが肝心の醤油の味が少し薄く、口内を闊歩する生臭さとの戦いだった。
②猪味噌野菜
(写真無し)
★★
少し甘めのもろみ味噌に猪肉のそぼろを合わせた肉味噌にきゅうりをつっこみ、かじる。
言われなければただのモロQとしか認識出来ない。特段印象には残らなかった。

③シカの七輪焼き
★★
備え付けのわさび塩で多少クセは緩和されるものの肉質自体がやはり固く、脂がのった部位もなんだか後を引きずるケモノの味わい。
味わい的にはジンギスカンに近いかなと三人で喋りながら箸を進めた。

④猪の七輪焼き
★★★
表現に困るくらいにただのブタ。
もちろん部位によって異なるのだろうが一般的な豚肉よりも肉の味が濃く、それでいてあっさりしているような感じがした。
⑤キジ肉の七輪焼き
★★★
(写真無し)
鶏肉と比べると淡白で、やや脂に甘味を感じるが目隠しされたら違いが何も分からないだろう。
唯一明確な違いと言ったら噛み続けていくとほんの少し独特な苦味?に到達するので、分別するとしたらここだろうか。

⑥ウズラの半身焼き
★★★★★
タマゴの方が有名なアレを半身丸ごと炭火で焼いたもの。
シカユッケは味が薄目で残念だったが、こちらは塩が多めにまぶしてあり、柔らかくてジューシーな身をビールで流し込むのが最高に美味しい。
見た目が見た目なので今まで生きてきた食事の中で最も「命」を頂戴している事を体感した。
いただきます、ごちそうさまの念は常に忘れないでいよう。
……ここまでで一通り予約したメニューの品は終了した。しかし、まだまだお腹に空きのある我々はもっと腹を満たすべく、追加注文する事によってジビエ料理の深みへと足を踏み入れたのであった。
⑦ジビエカリイ
★★★★
(写真無し)
あまりのウズラの美味しさに感化され、どうしても米が食いたくなったので一人注文。
スパイスの効いた本格的なカレールゥの中にブロック状のスジ肉(具材は日によって変わるらしい)がとろとろになるまで煮込まれており、もちもちの麦めしと一緒にかっ食らうと気分は男子高校生にタイムスリップ。
皿に盛られたカレーライスはあっという間に胃袋の中に消えてしまった。

⑧ウ サギ肉の七輪焼き(奥)
★★★★★
美味ェ〜〜!!!!
貶す理由など皆目見つからない。ふわふわとした食感に甘めの脂。それにピリ辛のわさび塩を付けるとこれ以上無いほどの極楽浄土。焼肉屋さんで存在していたらタンの次に注文するであろう。何枚だろうとペロっとイケる気しかしない。
⑨クマ肉の七輪焼き(手前)
★★★
折角ジビエ食いに来たんだしクマ食おうぜ!とみやびがノリで注文した1品。イメージ的に1番獣臭そうで1番えぐみが強そうで正直注文を躊躇ってしまった。事実今まで注文して来たお肉より何倍も良い血色の濃さ、肉自体のケモノ臭さに絶句した。が、それ以上に口にした時のクセの無さ、食べやすさに驚かされた。
本音で言うと表現に困る。普通に美味しいのだ。
あんまりほかの肉と比べるのも面白みにかけるが、三人の中ではビーフジャーキーの味に近いのではと結論が出された。
⑩キジ肉のお茶漬け
★★★★★★★★★★
(こいついつも写真撮ってねぇな)
三人満場一致で褒め讃えた伝説の逸品。
キジ肉から溢れ出る上品な脂がスープにより旨みと深みを与え、シメのはずなのにあまりの美味しさに今回一番盛り上がった。お願いだからレトルトでもいいから出して下さい。これ朝食って出社したらもう向かう所敵無しだろうから。
茶漬け史上一番美味しかったです。
〜感想〜
ここまでいっぱい食べた後に書くのは本当に気が引けるのだが正直に言わせてもらうと、やっぱり焼肉屋さんで食べるお肉の方が間違いなく美味しさは上だろうなと感じた。
別にジビエを貶している訳では無い。
やはりより美味しくなる様に試行錯誤を重ね、大変な思いで出荷してくれている牧畜関係者さんの努力が今一度理解出来たし、自然界で逞しく育ち上がった野生動物、それを狩るハンターさんやそれをひとつのムダも無く美味しく食べられるように加工する業者さんたち。
言葉にすると軽いようだが、どんなたべものでも「感謝」の気持ちをもって自分の血肉に変えていかなければならないと今一度実感することが出来た。
すべてのものにありがとう。
これからも美味しく残さず、感謝の気持ちを込めてご飯を食べていくことにします。
~完~
女装したぶるんに襲われた話
これは7月末に行われた、>OO<、だーすー、みなと、ラブカス、みつあつめ(女装)、ぶるん(女装)による食事オフの記録です。
色々間違ってたらごめん。
⓪〜はじまり〜
きっかけはみなと君の誘いだった。
何でも彼の好きなサッカークラブのエキシビションマッチを見に行くそうで、その流れで関東にいる部員を誘って食事会をしたいとの事で声をかけられた。
僕としては連勤真っ只中なので正直乗り気では無かったのだが、「ぶるんとみつあつめくんが女装して乗り込んでくる」という情報が決め手となり、この前代未聞の意味不明なイベントを是非とも逃してはならないと軽い気持ちで参加表明を出してしまった。
これが悪夢の始まりとも知らずに。
①〜合流〜
仕事を定時で終わらせ、最寄駅から電車に飛び乗る。
夜間とはいえ現在の気温は30°越え。少し歩いただけでTシャツが汗ばんでくる。こんな気温の中だーすー、みなと、ラブカス組は新国立競技場でサッカーを観戦していたらしい。流石に疲れも溜まっていたのだろう。秋葉原駅で彼ら3人と合流した時心なしか「げっそり」とした表情を浮かべていた。
>OO<「ごめんお待たせ」
見た所、集合場所に二人はまだ来てないらしいが…
みなと「何か一言ねぇの?」
>OO<「は?」
みなと「女装組だよ」
何を言っているのか分からない。まさかもう既に近くに居るのだろうか?
ふと視線を右に逸らすと妙に大胆不敵なぶるんと、これ以上無い程しんどそうな顔をしたみつあつめ君を発見。
改札前にも関わらず思いっきり叫び声を上げてしまった。
事前に女装するとは聞いていたものの、実際目の前にするとえも言われぬ感情が湧いてくる。ぶるんは前に個人のブログで載せてたイメージ通りの格好だったが、元々小顔でスラッとした印象のみつあつめ君は普通に衣装とマッチしており、遠目から見ればそこら辺に居る女性くらいにしか見えなかった。最初から存在に気づかなかったのが彼らの女装に違和感が無い事への証明のようで、多少悔しい。
ちなみにサッカー組ではない彼ら2人の過ごし方はというと、日中この格好でゲーセンに行き、新宿御苑を練り歩きおっパブ(女性スタッフがワンオペで1回断られたらしい)で疲れを癒して来たらしい。
何をやってたんだ本当に。
②〜店内にて
ぶるん「おい顔逸らすんじゃねぇよ」
みなと「…………(無言で僕と目を合わせている)」
店に到着してから少しの間無言の時間が流れた。
ここまで皆歩きっぱなし、尚且つ男6人で雑居ビルの横幅の狭い階段を三階まで登ってきた疲労もあるだろうが、向かいの席に座っている男たちの異様過ぎる圧力のせいで皆何をどこから触れていいか分からない様だった。
尚、席順は以下の通り。
壁 ラブカス みつあつめ ぶるん
〜 テーブル 〜
壁 >OO< だーすー みなと
ぶるん「とりあえず私達の写真でも撮りますか」
みつあつめ「僕がこれになってるの写真上げたら皆撮ったやつTwitterに上げてね」
ラブカス「えっ上げちゃっていいの?!」
みなと「何でそんなに乗り気なんだよ」
だーすー「いいけど呪われそうだからアップロードしたら直ぐフォルダの写真消すからな」
ラブカス「ちょっと奥さんに後で見せとくか…」
ぶるん「まあ私の女装姿は部員の奥方からの評判良いですからね」
>OO<(こういう事言うあたり自慢に思ってそう)
ぶるん&みっちーの自由奔放さに振り回されながらも優しい笑みを浮かべ梅酒を傾けるラブカス君の姿はまさに穏やかなお父さんそのものだった。まさか彼もみつあつめ君との初対面の場が女装オフになるとは夢にも思っていなかったろうが、「それでもこうして初めて会えて良かったよ」と言い放つ包容力は見習わなければならない。
少しだけ和んだのも束の間、今度はみなとくんの悲痛な叫び声が店内に響いた。
みなと「お前俺の目の前で足を開くな足を!何か見えそうなのがきちぃんだよ!」
ぶるん「まあ今ブラもつけてますし女性用の下着も履いてますからね」
だーすー「…………」(死んだような顔をしている)
みなと「……」(見た事の無い様な笑みを浮かべている)
>OO<「…」(強〇後の気持ちってこんな感じなんだなと実感している)
みなと「……おい」
>OO<「なに」
みなと「お前もこのキツさを味わえ」
>OO<「はぁ?!」
みなとくんの号令の元、急遽席がチェンジされた。
NEW!
壁 ぶるん みつあつめ ラブカス
〜 テーブル 〜
壁>OO< だーすー みなと
ぶるん「いや〜それで同僚が〜」(両手を擦り合わせながら足をカパカパしている)
>OO<「……」
>OO<「キツいよ……」
間近で見る友達の女装がこんなにも辛いとは想像もしていなかった。
かく言う自分も学生時代お遊びの女装をした事があったが、内心友人各位も似た様な思いを抱えていたのだろうか。いやこれよりはマシだったと願いたいな……
どうでもいい事を考えながら話題に詰まった僕はグラスをただ傾け続けていたが、ふと彼らのウィッグが目に入った。
>OO<「ウィッグってさ、どんな感じなん?今の地毛ってどの位の長さ?」
みなと「興味を持つな興味を」
>OO<(黙れ これしか話題が思い浮かばなかったんだよ!)
ぶるん「元の長さは……」
彼は徐ろに上体を起こし、僕の頭に手をやり荒っぽくそのままわしわしと乱暴に撫で始める。
ぶるん「お前と同じくらいかちょっと短いくらいですね(キザボイス)」
>OO<(きちぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!)
その汚ぇ手で触るんじゃねぇと喉まで出かけたが流石に可哀想と思ってやめておいた。女装男に髪を撫でられるというプラチナトロフィーを獲得してしまった僕は完全に再起不能になってしまい、死んだような目をしながら隣のだーすーのアゴヒゲの本数を数え始めた。
奥に座るみなとくんからの(お前も「そう」だろう?)と言わんばかりの同情の目だけが、妙に温かかった。
その後もぶるん一人がはしゃぎまくり、その他全員がお通夜状態で酒を飲み交わす時間が流れ、とうとう我々どころか店員さんまでも接客が面倒になったのか(そもそも大声で暴れ散らかす女装おじさんを目に入れたくなかったのか)ぶるんのレモンサワーを一度に二杯ずつ持ってくるようになった。
本来ならここで止めるべきだったのだが、皆内心店員さんに申し訳なさを感じていたしアルコールも薄かった為、いい歳した大人だし分量位弁えてるよな?という、か細かな願いを胸に秘めそのまま放っておいた。
しかし彼のテンションは留まる事を知らず、どんどん過激な方向へ突っ走って行ったのである。
トイレから席に戻ると、みなとくんが席から居なくなっていた。どうやらお会計をまとめて支払ってくれているらしい。席に座して待つか……とだーすーに声をかけどいてもらおうとした時、ぶるんから「隣に座らないのか?」と声をかけられた。
泥酔状態のホモの隣に座るわけないだろ!
……と今なら拒否できたのだが、なんだかんだ僕もビールを6杯程飲み干していたのでどこでもいいからさっさと座りたかった。それにみなとくんが戻ってくるまでそう時間はかからないだろうと高を括り、あろう事か今年度最大級のデンジャーゾーンに自ら足を踏み入れてしまったのだ。
NEW!
壁 ぶるん >OO< みつあつめ
〜 テーブル 〜
壁 だーすー ラブカス
ぶるん「いぇーいメガネくんいぇーい」
>OO<(……今は忍び耐える時)
ぶるん「おいこっち見ろよメガネくん」
>OO<(……見る訳ないだろ)
ぶるん「こっちを見ろって言ってんだろ〜!!!!」
その時だった。

突如彼は横にいる僕の身体を抱き寄せ、ハグした状態で頭を撫で始め、更に残った片手で僕の胸を揉み始めたのだ。
>OO<「ふざけんな!やめろバカ!」
黙ってこのまま捕食される訳には行かない。どこかで聞いた様なセリフを吐きながら必死に抵抗するも酔っ払い限界までリミットを外した彼の力に勝てず、そのまま僕の胸部から馴れた手つきで乳首を正確に探り当て、爪先で執拗に転がしてくる。
>OO<「いい加減にしろ!!!」
数秒、いや体感数時間にも及ぶ揉み合いの末、ようやく彼の支配下から解放された。彼は残念がりながらも妙に甘えた声でいいじゃん別に……とかボヤく。いいわけが無いだろう。貞操の危機なんだぞこっちは。
みなとくんが戻って来てから早々と帰り支度を始めた。
③〜地獄の百鬼夜行〜
僕とだーすーの終電までは2~30分。東京在住のぶるん、泊まり組のラブカスくん、みつあつめくんはともかくとして翌日仕事組の僕らは何がなんでも帰らなければならない。ただここから最寄駅までの距離はおよそ500m程で、どれだけノロノロ歩いても間に合うはずだ。
店を出て、螺旋階段を下ろうとする。が。
ぶるんが着いてこない。
みなと「あいつ出てこなくね?」
まさか酔い潰れたまま店に残っているんじゃ……
嫌な予感は的中した。
彼は店を出る様子を一切せず、おしゃれなカフェのデカいテディベアの様に盛大に椅子にもたれ、ウンウン唸っていた。
完全に潰れていやがる。
>OO<「大丈夫か…?皆出たからもう行くぞ」
ぶるん「はーい今出まーす」
力強い発言とは裏腹に彼の足取りはおぼつかず、あっちに行ってはよろよろ、席にぶつかってはよろよろするぶるんを後ろから見守りながら帰路につく。
せめてこの店にエレベーターでもあればよかったのだがボロい雑居ビルにそんなものはなく、不安定な前傾姿勢の身体を羽交い締めの体勢で思いっきり後ろに引っ張り、声掛けしながら真夏の引越し業者の如く一段一段下ろしていく。額から零れてきた汗と彼の黄金色のウィッグが目に入りとても痛かったが、ここで手を緩めたりでもしたら彼の体が文字通り横転し、最悪僕まで巻き添えを食らってしまう。地上階まで降りて来た時には身体がオーバーヒートしたかのように汗まみれになり、あと500m歩かなければならない絶望で身が凍りついた。
更に頼みの綱のだーすー一行は遙か前方を行き、とてもじゃないが助けてくれる様子は無い。
今考えれば僕の行動の方がおかしいのだろう。あれだけ犯されかけたのにも関わらずホモレイパーを肩に乗っけているのだから。それにこの状況をどうしたらいいのか分からない、という点もあったのだろう。
そのままおぶってノロノロ歩き、一旦止まっては水を与え、1歩ずつ駅へと歩を進める。
通りの人々は怪訝な顔をしながら僕らとすれ違っていく。懸命に救助しているつもりでも、周りからすれば単なる女装おじさんをホテルへお持ち帰りする一般成人ホモ男性にしか見えなかったのだろう。彼の身体も彼の荷物も重かったが、何より人の目線が重くのしかかってくる。
さらば、若さを羨むような顔をした居酒屋のおじさん。
さらば、カメラを構えてこちらを撮影するカップルたち。
楽しげなひと時を過ごす裏では、辛く苦しい思いをしている人間がいる事を脳裏に焼き付けていけよ。
④〜別れ〜
駅の改札に到着し、ひとまずほっと一息。
無限にも思えた地獄もようやく解放される。
>OO<「先改札通ってるから早く来いよ」
ぶるん「はーい」
返事もしっかりしている。店を出て多少時間が経ったから大丈夫だろうと先行してしまったが、振り返って見ると彼は改札前の通路に段々へたりと座り込んでいく。
一人では財布のPASMOを出すことすら出来ない体に成り下がっていたのだ。
僕の終電が到着するまでもう残り5分もない。駅までは連れてきたし、このままへたりこんだ七日目のセミを置いて帰ってもバチは当たらないだろう。
だがよたよたと倒れ込み浮浪者の如くバッグを漁るぶるんをまるで化け物を見るかのような通行人の視線が痛々しくていても立っても居られず、仕方なく券売機横のインターホンボタンを押し、駐在している駅員さんと通話した。
>OO<「すみません改札前で倒れてるだn…方の介助をしたいのでもう一度改札を通らせて頂きたいのですが」
駅員さん「ああ…カメラで確認しました」
駅員さん「お知り合いの方ですか?」
>OO<「………………」
>OO<「…………………………」
>OO<「はい」
改札を過ぎる若いカップルがドン引きした表情で僕に視線を送るのが伝わってくる。今まで気を強く持っていた僕はとうとうここで心が壊れた音がした。
その後僕はもういても立ってもいられず爆速で彼を叩き起し担ぎ上げ、別方面のみなとくんに別れを告げて泣きそうな顔をしながらホームの階段を全力で駆け上っていった。もう顔から零れているのが汗だか涙だかようわからんくなっていた。その勢いのまま担ぎ上げながら乗車する。乗客の奇異の目線を必死に感じ取らないように人間の形をした傍らのゴミを鉄棒に捕まらせ、だーすーとみつあつめくんがホームで買ってきてくれたペットボトルの水を一気飲みした。
キンキンに冷えた水と冷房が疲れた体を潤してくれる。心地よい疲労感だ。救助した男の様相は兎も角、1人の人命を救助した事には違いない。
そう思いこむしか出来なかった。
ただ当然ながら我々さいたま組はぶるんを家まで送り返す事までは出来ない。本当に心苦しいが都内で一泊するみつあつめくんに今後全てを託す他無かった。
みつあつめ「とりあえず僕が乗り換え先まで送ってくわ」
だーすー「いや本当に申し訳ねぇな……」
みつあつめ「いや全然全然。」
みつあつめ「次はちゃんとした時にまた会おうね」
>OO<「ごめんな……色々……」
電車から降りた僕とだーすーはみつあつめくんに礼を言い、電車が発車するまでの間苦笑いする彼に申し訳なさげに手を振り続けたのだった……
〜[完]〜
その後DMにて。
みつあつめ「結局乗り換え駅で降ろした 吐かず言葉通じてたし歩いてたから大丈夫そう」
みつあつめ「あとホームで座ってピースしてた」
〇す。
なんだかんだで楽しかったです。
また集まってバカやろうね。
皆様本当にお疲れ様。
〜ほんとに完〜
こだわりメガネの介護士生活 一ヶ月目
※人物名は全てフィクションです。
0週目
面接が終わると、直ぐに内定通知を渡された。
介護業界。
技術職だった僕がまさかこんな所に辿り着くなんて、10年前は想像もつかなかっただろう。
確かに常に人手は不足してそうな業界だし、喋りや経歴を評価されたのは嬉しいが、やっぱりこれには面食らった。個人的に面接はそこまで苦手ではなかったが、「真面目過ぎて君といると堅苦しくなる」という何とも言えない評価を頂き何社かは落とされた過去がある。
嬉しさ半分不安半分の微妙な気持ちだったのが本音だが、施設の条件や雰囲気はそう悪いものではない。帰路の途中、僕はそこに籍を置く覚悟を整えた。
1週目
新館が出来る為か、3月入社の人間は僕を含め相当な人数が居るらしい。現に通された会議室では既に3人緊張した面持ちで席に座っている。僕も緊張のあまり変な風になりかけだったのだが、その前にご主人よりも服の方がおかしくなった。
チャックが変に噛み合って全然ダウンが脱げないのである。
焦りに焦った僕はもうこの上着を力ずくで破壊しようか迷ったが、結構着回して便利だった服をこんな所で失う訳には行かない。平条を装い僕はゴソゴソと格闘を始めた。30分前に着いたのが功を奏し、結局オリエンテーションが始まる2分前には何とか脱ぐ事に成功した。
何の話だ。
その後僕が担当するのは上階のユニットだと命じられ、担当者が来るまでそこで待ってくれと部屋に向かう。パスコードを打ち、扉を開けると教室2コ分程の広さの空間に10人の入居者のお爺さんお婆さんが壁に備え付けられたテレビを眺めていた。緊張しながらその辺をウロウロしてると新人さん?と声をかけられた。
3~40代位の職員さんだろうか、薄桃色の制服を身にまとったお姉様に尋ねられる。話していくとこの人が僕のOJTの担当者でこのユニットのリーダー的存在だというのが分かった。
まずは未経験だし焦ることはないから、とりあえずこの週は入居者の名前を覚えていけば大丈夫との事だったので、一先ず人の良さそうな顔のした可愛いお婆さんに声をかけてみる事にしたが、僕はここで少し迷った。
敬語って使うべきなんだろうか。
当然一般社会だと目上の人には使うに越したことはない。ただ他の職員を見てみると砕けた喋り方を通しているし、ずっとここで生活している人に対して変に敬語を使って壁を作っている感を出すのも良くないかなと思い、僕はあえて自己紹介以外の雑談を砕けた口調で喋ってみる事にした。
どこ出身なんですか?好きな食べ物はなんですか?etc.....
元々人と喋るのも好きだし、声量もかなりデカい体質。更には人から「優しいというか流されているのでは」疑惑を持たれる僕にとってお年寄りと接することは何ら苦では無い。御歳92歳のオコメさんと穏やかに仲良く喋っている内に、やっぱり思った通り向いている仕事なのではと実感出来た。
その後、先程のOJTリーダーのコガネさんとドラクエ一行の様に後ろについて行って軽く業務内容の流れを学び、定時になった瞬間にほら終わったから帰るよ〜と促され初日が終わった。身体的にはそこまで辛くなさそうだし、これなら何とかなりそうだ。
早いとこ慣れて皆のお役に立たなくちゃ。
2週目
便の介助は苦手か?
と先輩達によく尋ねられる。
自分としては元々犬の世話をしているので特に何とも思ってないし、この業界に入る上で覚悟は出来てますという事を伝えると、先輩たちは安堵した様にそっか〜!良かった〜!と繰り返す。やはりそこがこの業界を辞めるトップクラスの理由なのだろう。
手慣れた様子でう○こで汚れたちん○んやケツ穴を洗浄してオムツを変える先輩を見学しながらそう思った。
ただ僕も全く得意という訳では無い。ナースがケツ穴に指を突っ込んで下痢便を只管出させる業務があるのだが、この温泉のようにコポコポ湧きいでるものを見るのは流石に堪えてしまった。
が、入居者さんも好きでこんな事されている訳じゃないはずだ。本当だったら今頃ご家族と幸せに暮らしている所。それが困難になってしまったから先輩たちの様に日常のqolを少しでも上げられる様に手伝うお仕事がある。僕はそこに崇高さを見出したのだ。だからこの程度で心が折れる訳は無かった。
困っている人を救いたい。
綺麗事かもしれないけど、それが僕の原動力だ。
その職種がどれだけ辛いかは喫煙所を見ればわかる。タバコの本数が多ければ多い程精神的苦痛が大きいのだ。
さて、介護業界はというと...想像通り、めちゃくちゃに本数が多い。僕が所属しているユニットにも凡そ7割方は吸っているので、休憩中は付き合いがてら連れて行かれることが多い。タバコミュニケーションとは陳腐だが、こういう所でも職員同士の愚痴や悩み事などが聞けるいいチャンスだ。今日も一緒に来た男性社員の月島さんは良く僕の面倒を優しく見守ってくれるし、話の引き出しがスポーツからサブカルまでネタが広いので聴いていて楽しい。イメージ的には尊敬しているマリくんとエモさんを足して割ったような感じだろうか。
「メガネくんはなんでこの業界に来たの?まだ若いしやれる事は沢山あったんじゃない?」
「昔父方のじいちゃんが末期がんと認知症になった時、僕や介護士やってた母親が頑張って面倒見てたんですけど...それ以外の人間が何もやらずに酒ばっか飲んでるのが凄く腹が立って...苦しんでるじいちゃんに何も出来なかったのが本当に辛くて、それで」
「そっか、優しいんだね...でもその優しさがアダになる時もあるし、無理せず自分を守って、それでいて貫き通すんだよ」
その時の会話はそれで終わった。
僕がこの言葉の本当の意味を知るには、まだ日数が足りないのだろう。
3週目
入居者の方が裂傷を起こした。
左足の皮が焼いたウインナーの様にパックリ割れていて、表皮は疎か中のピンク色の肉まで見えている。明け方暴れた時に転んでそうなったのだと夜勤の方から申し送りを頂いた。
日中、ナースと一緒に処置が行われた。テープで残った皮と皮を繋ぎ止める作業。僕と先輩の大林さんは暴れる体を抑える役割だった。
「痛いよぅ!痛いよぅ!」と暴れ回る入居者の新井さんの上半身を必死で食い止める。その右側を覗き込むと、10平方センチメートル程の血まみれになった足を丁寧に、冷静に消毒するナースさん。日曜日だから今日はドクターを呼ぶ事は出来ない。地道な作業だった。
新井さんの顔はその内涙にまみれて
「殺してくれ!殺してくれ!」
と苦悶の表情に変わっていく。僕はただ「ごめんね、痛いよね。ごめんね...ごめんね...」と力で抑え込むしか出来なかった。(力一杯抑えると今度は腕が内出血に繋がるので力加減が難しい作業だった。)
またしてもこれか。僕は何も出来ないのか。
祖父が死んだ時の無力感に苛まれる。
凡そ1時間弱だろうか、応急処置が終わり血塗れのシーツを交換し汚物室まで持っていった時、男性職員のシマムラ先輩に声をかけられた。
「辛くはなかった?」
「はい...結構こういう事ってあったりするんですか」
「日常茶飯事...とまでは行かないけどそうですね。元々認知症の方たちなので夜は帰りたいと暴れる人たちがこうして怪我をされるパターンが割かしあったりします。」
「そういう物ですか...」
「思っているより御年寄ってすぐ怪我や病気にかかってしまうんです。僕らが出来ることはそう多くは無いですけど、例えば移乗する際だったり日常生活であったり、入居者さんたちが辛い思いを極力させない様に見守っていくのもまた、重要な役割なんですよ」
事前に取った資格やテキストで学習してきた事は多々ある。しかし、教本だけで全てが分かる訳では無い。
僕はここで、介護という道の険しさを改めて知る事になった。