音楽を聴くメガネ虫#13EMBRACE

BOOM BOOM SATELLITES

『EMBRACE』

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日本のビッグ・ビート史に残る伝説的なバンド、BOOM BOOM SATELLITES

ベルギーからデビューした当初は完全にクラブ音楽のインストグループとして割り切っていたが、3作目のアルバム『OUTLOUD』(これもめちゃくちゃカッコイイ)から徐々に歌モノ有のロック寄りに近づいて行った。

元々あまり表舞台には出ず、知る人ぞ知るといったニュアンスのグループだったのだが、何をとち狂ったのかあの伝説のクソアニメ「ニンジャスレイヤー」のOPを手かげ(てしまっ)た事により、一時ニコチュー=サンからの注目度がそこそこあった。

そんな彼らの作品の中でも、一番ロックとクラブミュージックのバランスが取れていて、癖が無く取っ付きやすい仕上がりになっているのがこのアルバムだと思っている。

 

 

 

よりダークに、より都会的にアレンジを施し蘇らせたカバー『HELTER SKELTER』にはただ原始的に錯乱していた印象の強いビートルズのそれよりも狂気具合が洗練されていて、オリジナリティとマッチっぷりを考慮すると決してMötley CrüeやU2のそれよりも引けを取らないだろう。その後に続くのが機動戦士ガンダムUC episode 5のテーマソング『BROKEN MIRROR』は不穏な感情が段々溜まりに溜まって一気に爆発していくイメージ。ガンダムファンからすればバンシィという機体の独特の怖さはわかって貰えると思うが、明らかにやべーやつが上空から降って来た時の緊張感のマッチ具合は半端では無かった

 

その名曲達の脇を今作最もシンプルなダンスロックナンバー『DRIFTER』、よりダウナーでサイケデリックなアングラさを追求した『DISCONNECTED』、激しいサビのツーバスに身が昂る『FLUTTER』が固めるが、BOOMBOOMSATELLITESはバラードの質が高さも魅力的で、寧ろここからが本番と言っても過言では無い。透き通った歌声が響き渡る『NINE』は晴れやかな朝の空気のような爽やかな仕上がりで、今までに無かった位でメジャー進行のポップさにびっくりしたものの、『ANOTHER PERFECT DAY』から始まった今作「EMBRACE」……

「抱擁する」

という暖かい意味合いをテーマにした今作を締め括るに当たっては最も適していた曲だと感じる。

実際、相方の中野雅之はこんな事をTwitterで呟いていた。

 

「そういえばnineっていう曲は震災後、悩んだあげくの末に出来た曲だった。 川島君は鎮魂歌とか、祈りとか、誰かの為に捧げる為の歌を歌わせたら最強だよ。今日も川島君は歌います。」

 

 

 

 

 

 

 

ボーカルの川島道行はこのアルバムのリリースから約3年後、脳腫瘍との壮絶な闘病生活の末2016年10月に逝去されている。

没年最後にリリースしたE.P『LAY YOUR HANDS ON ME』の素晴らしさも、いつかどこかで語れたらいいな。