音楽を聴くメガネ虫#14 Random Access Memories

Daft Punk

『Random Access Memories』

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ご存知フランス産のロボット2体組が作り上げた世界的名盤が、今年でめでたく10周年を迎えるらしい。

 

……え????

 

嘘でしょ!?????未だに俺にとっての最新のアルバムって言ったらコレなのに!?????

と思って10年前のオリコンを引っ張ってきました。

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終わってんなぁ……

 

 

 

正直、当初アルバムを聴いた印象は「地味」ではあった。が、「やさしめのthe Chemical Brothers」といった従来のイメージとは全く別。曲中、随所に感じられる「人間」としての温かみのあるメッセージに加え、より生音のグルーヴ感を高めたフュージョンジャズ的な内容に纏まっている。

ただクラブで客をノセるだけ」といった今までのニッチなクラブミュージック界の概念がこの1枚によって大きく覆されたのが名盤と呼ばれる一つの理由だろう。

その点、『Get Lucky 』が作中の中でも飛び抜けて売れたのは非常に理解出来る。

事実、古めかしいブラックミュージックのフォーマットを取り入れたBruno Marsの『24K Magic』が馬鹿みたいに売れた様に、この頃はスマホが普及し始め、若者達がより気軽に過去の名曲を探る事が可能になっていた。そんな時代にマッチした今作はPharrellを始め、業界トップクラスのミュージシャンが生み出した最先端のレトロサウンドは地味ではあるものの曲の何処から聴いても頭に残りやすく、自然とリズムを取ってしまうキャッチーな名曲。

 

ただ特にツボなのが『Instant Crush』。

「このまま友達として関係を続けるか、それとも恋愛対象として発展させるべきか」……という、内向的極まる歌詞をより昇華させるメロウな曲調の中に、TheStrokesのジュリアン・カサブランカスのメランコリックな歌声が響き渡る。知ってか知らずか、当時高校時代よくそんな感情で悩んでいた時に自然と好んで聴いていた。だからなのか、大人になった今聴くと少しくすぐったいような、懐かしいような不思議な感じがする。

 

彼らの原型を最も感じられる曲と言えば終盤の二曲位だろうか。エレクトロニックなメロディが淡々と続く無機質な『Doin' It Right 』だが、サビでは繰り返し「ベストを尽くせば必ず成し遂げられる」といった熱いメッセージが込められている。またインスト曲『Contact』はアポロ17号の船長のボイスメッセージを使用した近未来的なセッションで、実際ロケットのエネルギーが充満していく様にテンションが膨れ上がっていく。

 

また、彼らは2021年を最後に解散してしまったのだが、その際「epilogue」と題された動画に使用されたのが近未来的な賛美歌、『Touch』ので締められる。

hold on, if love is the answer, you’re home

(もし愛が答えなら、僕の帰るべき場所は君だ)

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そんな、無機質なロボットの外見からは想像も付かない程に優しく、暖かいメッセージを最後に残し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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彼らはしめやかに爆発四散していくのであった。