夏の日のスマッシュ・ボーイ

子供って程度を知らないよね。という話。

 

 

小学生の頃、どこの友達の家に行ってもやらされる一本のゲームソフトがあった。

 

苦手だと抗議していてもリモコンを渡され半泣きになりながらもプレイしたあのソフト。

 


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大乱闘スマッシュブラザーズXである。

当時アクションゲームが大の苦手だった僕は最早サンドバッグ同然となり下がり、カービィで上Bするかストーンになるかしか生き残る術はなく、下手と公言してるにも関わらず毎回やらされる為このゲームが出される度にうんざりしていたのだが、当時僕をカモにしていたクラスの人気者Yくんの

「悔しかったら上手くなってみろよ」

の一言に奮起。

ルックスも足の速さも勉強でも何もかも勝てないYくんへの怒りと、何の努力もしてないのに被害者ヅラしていた自分への怒りが僕の復讐心?を駆り立て、帰宅後亜空の使者をクリアして以降本棚に封印していたソフトを引っ張り出し、とりあえず原作が大好きだったネスの練習を開始。

 

それから特訓の日々が始まった。

 

5時に起きてPKファイアー&掴み下コンボを毎朝2時間練習し、学校から帰ってきて晩御飯までPKサンダーの復帰阻止作業を繰り返し、今までCPULv3すらボコられていたのに気づけばLv9をザコ扱いし始めていた。

 

それから数日が経ち、夏休みまで指折り数えていたある日の事である。

 

Yくんが突然スマブラ大会のメンバーを募集し始め、僕は当然復讐のチャンスだと言わんばかりにエントリーした。

 

「いや今回ガチだかんね?初心者にも容赦せんよ?」

と不審がるYくん。

はたまた

「あの頃のお↑れ↓と一緒にすんなよ(ニヒル風)

とイキり立つ僕。

 

その後メンバーは僕らを含めて男女8人が集まり、授業の後Yくんの家に集まり軽くキャラを動かした後、いよいよトーナメントが始まった。

 

「見てろよ…!」

 

僕は持ち前の攻撃を当てるスキルと膨大なプレイ時間の暴力でトーナメントを次々突破。

遂に今まで一度も勝てなかったYくんを下し、見事優勝に輝いたのだった。

 

努力の成果が実った!

おれは仇討ちを成功させたんだ!

 

といつも以上にやたらめったらハイになってしまい、

「お前クソザコって馬鹿にしたお↑れ↓に負けた今の感想どうですか〜ン〜?wwww」

とイキりにイキった僕は今までの恨み辛みもあり、彼に心無い罵声を散々あびせ続けた。

「…?」

周囲の異変に気づいたのは、数秒もしなかった。

彼がなんだか肩を震わせている。

鼻水を啜る音も聞こえてくる。

そう。

Yくんは羞恥のあまり泣いてしまったのだ。

僕は優勝したのにむしろ何だか空気読めてない奴みたいな扱いをされ、挙句クラスのちょっと気になっていた女の子までが「Yくん大丈夫?」と声をかけ、「あんた謝んなさいよ!」「帰れ!帰れ!」と逆に罵声を浴びせられる始末。

居てもたってもいられず、泣きながらその場を飛び出した。

 

無常にも優勝に贈られた景品はトロフィーでも金メダルでもなんでもなく、クラスメイトの罵声とレッドカードだったのだ。

 

その後ただいまも言わず帰宅し持っていったGCコンをベットに投げつけると、僕はスマブラをまた本棚にしまいこみ部屋を真っ暗にしながら、誕生日プレゼントだったSDガンダムスカッドハンマー」で力の限りリモコンを振り下ろし、ドップを粉砕し始めた。

 

「優勝したのに…お↑れ↓頑張ったのに…」

 

辺りには子どもの鼻をすする音と、モビルスーツの爆破音。そして扇風機の優しげな風の音だけが響いていた。

 

お詫び

子供の頃やった事とはいえ、んであんなムキになってしまったんだと未だに恥ずかしさのあまり気が狂いそうになる程心の底から反省してます。

Yくん、多分もう会うことは無いだろうけど自己満足だろうけど、もし再会出来ることならば、大人になった今謝罪させて下さい。

本当にすいませんでした。

 

陰キャ黒歴史

終わり